ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白夜のトワイライト ( No.93 )
- 日時: 2010/09/15 21:40
- 名前: 遮犬 (ID: cLZL9WsW)
俺たちは、日上家はとても賑やかで楽しい家族だった。
みんな笑顔で、近所の人たちとの関係も良好で…本当に幸せの家庭だった。
それが、まさかあんなことになるなんて、思いもしなかった。
嫌な音を立てて少年の顔につく血。
その少年の周りには数々の死体が散乱していた。それに、その死体の顔にはそれぞれ見覚えがあった。
母親、姉、弟、妹、そして……血のベッタリとついたナイフを持っている父親。
「とう…さん……?」何が目の前で起こっているのか全くわからなかった。
あの優しい父が、ナイフをもって、母たちの死体が床に転がっている。
まだ幼かった少年、優輝はただ呆然として父親を呼ぶだけ。
「ゆ、優輝…ごめんな…? でもな…しょうがないんだよ……父さん、もうこうするしかないんだ……」
ナイフを持って半笑いで近づいてくる父。
思わず後ろに下がる。すると足元に何かがぶつかる。
「ね、姉ちゃん…!!」
それは姉の死体だった。もう生気のない、姉の変わり果てた姿。
少し怒ると怖いけどいつも自分のことを何かと気遣ってくれていた姉。心は優しい姉。
「う、うわぁあああああ!!」思わず叫んでしまう。するとそれに呼応するかのように父親も
「優輝……大丈夫だ…お前を殺した後に、俺も死ぬ……だから…!」だんだん近づいてくる。
「く、くるなぁっ!」今は変わり果てた父親に向かって歪んだ表情で叫ぶ。
「ど、どうして…どうしてわかってくれないんだ…?なぁ…優輝ぃいい!!」
父親がナイフを振り上げて優輝を刺そうとするが優輝は間一髪でよける。
が、その避けた後に弟の死体があり、父親のナイフはそのまま弟の死体に向かって突き刺さる。
もう死んでいるのに、弟の体の中から血の混じったものが噴水のように出てくる。
優輝はその血の噴水でまた顔を汚す。そして優輝は傍にあった鉄バットを持った。
「や、やめてよ…! やめてよっ!父さん!!」だがその言葉もむなしく父親は優輝に襲い掛かる。
優輝は恐怖の末、その鉄バットで思い切り父親の顔を殴った。その勢いで父親は血の海の中に埋もれる。
「うぅ…! うわぁああああ!!!!」そして優輝は何度も、何度も父親の体を殴ろうとした。
「あいつの…黒獅子のせいで…黒獅子に…はめられたんだ…」その言葉を無視するかのようにまた殴る。
「優輝…頼む…黒獅子を…俺たち家族の仇を…とってくれ…」それらを掻き消すかのようにまた殴る。
殴って、殴って、殴って。もう息の音も何もかも聞こえなくなり、また自分の意識も途切れて気づいた時
優輝は警察によって保護されていた。事件の真相は父親の無理心中ということになった。
だが父親の死に際に残した黒獅子というネームは何を示したのだろうか。
その後月日が流れ、優輝ももう高校生になるころ。エデンで死なない程度に戦っていたそんな時
武装警察の刑事こと慶治から黒獅子のことを聞き、武装警察に入ることになった。
自分は、父親は無理心中をしたんじゃない。あれは黒獅子が何か、俺たちに何かしたんだ。
これを証明することによって家族みんなの無念を晴らせるし、俺の人殺しの責任もなくなる。
もし、黒獅子を殺して仇をとることに成功したら…俺はどうなればいいのか。
「…ぅん…」優輝は目覚める。そこは真っ白に染められた部屋。点滴が自分についていることも知る。
見た感じ病院だということがわかった。ゆっくりとなんで自分はまた病院にいるのかを思い出してみる。
(確か…黒獅子の情報があって…断罪とかいうやつが知ってるとかで…あっ、そうか…)
自分の腹の辺りを見ると大きく包帯でグルグルに巻かれており、起き上がろうとすると腹の痛みがひどい。
「今どうなってるのか知りたいな…断罪のことも気になるしな…」
自分は今現実の世界にいるようだ。この空気の悪い世界は現実しかない。
エデン内で相当のダメージを喰らったので現実の世界で直接手術しないと危なかったみたいだ。
(多分…有香が俺を訪ねてきたんだろうな……飯もってきてくれるっていってたし)
大きくため息をつく。そしてこのままじゃダメだと思う。
「守られてばかりじゃダメだな…俺も、白夜みたいに強くならないと…」
優輝はほんのりと白夜は今何をしているのか少し気になった。
(どうせ、またどっかで戦ってるに違いないけどな…早く、黒獅子を見つけて…殺さないと…)
それが俺に与えられた罪なのだから。