ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鬼[オニガリ]狩 ( No.12 )
- 日時: 2010/08/21 15:11
- 名前: 黒ネコ^・д・^ (ID: q9W3Aa/j)
「水那・・・っ!!」
人通りの少ない片隅に10体の鬼。その中に青ざめて座り込んでいる女の姿が一つ。
彼女は俺の姿に気付くと安堵したように、頬に涙を伝わらせる。
幸い、まだ喰われていなかったようだ。
だけど、腹部から赤い染みが広がっている。鬼に引っかかれたか・・・。
俺は舌打ちしてから水那に聞こえるように呟く。
「目ぇ、・・閉じてろ」
水那は静かに頷き、ゆっくりと目を閉じた。
それと同時に背中から太刀をゆっくりと引き抜く。
「・・・・・・死ね」
抑えられない怒りを鬼たちにぶちまける。
3,4体を粉砕させて、2体ぐらい頭や腕やらバラバラにしてやった。
残り3体・・・。 鬼たちは恐れを知らない。
ただ生き胆を求めて這いずり回る。
ものすごい勢いで襲い掛かってくる鬼。
その刹那、
辺りに鮮やかな鮮血が舞う。まるで桜の花びらのように・・・。
「・・・悠夜・・・?」
水那の声にハッとして振り向く。
彼女は目を大きく見開かせ、カタカタと震えていた。
「・・目、閉じてろっていっただろ」
だけど彼女は何も言わない。
・・・愛想つかされたか。こんな返り血に染まったヤツ・・・殺人鬼にしか見えねえよな・・。
肩を落としながら太刀についた血を拭き取り、鞘に戻す。
ついでに顔についた血も手のひらで強引に拭き取る。
この間の真田と違って、今度は俺が袖を真っ赤にぬらしちまった。
なんともいえない複雑な気持ちになる。
助けれたけど、“鬼狩り”を見られてしまった。
顔を拭いた後、水那に向き直る。
「俺が怖くなった?“鬼狩り”だから」
水那はいっかいビクっと震えた。 図星つかれると震える癖、直ってねえのな。
「怖いよ・・・。だけど“悠夜”は“悠夜”変わりない」
今度は俺が目を見開く。
「一人で抱え込まないで・・。あたしにも頼ってよ」
水那はそういうと、ぎこちなく笑う。
・・・さっきまでグチャグチャだった気持ちがすっと消えていく感じがした。
あぁ、そうするよ・・・。 俺も微笑む。
「立てるか?」
水那は頷くけど、足が震えている。
・・力抜けちまってるな。・・しゃーねえ。
「ゆ、悠夜っ!!」
「いーから」
水那はお姫様抱っこされて戸惑っていた。
真っ赤になるなよな、こっちも恥ずかしくなるから・・・。
「・・・浅葱君?」
「真田?」
名前をばれて後ろを向くと、真田が驚いた顔で俺を見ていた。
「・・・一人で倒したの?」
「・・あぁ、・・どうした?」
「仁谷君が援護に行ってくれ・・・って」
そういうことか。いつもだったら5体以上から二人で殺ってたからな・・・。
しかも今回は10体を一人で殺ったから驚いてんだろう。
「じゃあ、俺コイツ送ってくから。明日みんなで話そうぜ」
「・・・わかった」
俺は頷いてから歩き出す。
「・・・そういうことだったんだ」
「・・・・なにが?」
ボソと呟く水那に問うと、顔を真っ赤にしてから「こっちの話」と返した。
・・・どっちの話だ??
疑問に思いながらも俺はスルーしておくことにした。
明日は大変だろうな・・・・——