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Re: 鬼[オニガリ]狩 ( No.7 )
日時: 2010/08/19 15:41
名前: 黒ネコ^・д・^ (ID: q9W3Aa/j)

...水那の危機...




「・・・うや」
「ん・・・っ」
誰かが俺の名を呼ぶ。 正直いってうるさいほど。
相手は声ですぐにわかった。 寝た振りして無視だ。
だが・・・、
「悠夜っ!!」
「いでっ」
頭をなんかの物体で叩いてきやがった。
俺は不機嫌な顔をして、叩いたうるさい元凶———白石水那を睨む。
「なんだよ」
「お弁当!おばさんから預かったの」
あぁ、そういや寝ぼけてて持ってくんの忘れてた。
差し出されたお弁当を素直に受け取る。
「お、やっと起きたか」
そこに英助と真田が弁当やらパンやらを持って、会話に割って入ってきた。
「・・・・今、昼か?」
「うん、・・・こんにちは」
・・・・正直、真田の性格がよくわからない。
モテるのに、こんな変な性格だったら男もあきれるぜ。


「で、なんで水那がいんの?1組からわざわざ5組まで」
「さっき言ったじゃん!お弁当!!」
あー、そうそう。そう言ってたな。
すると、隣で英助がニヤニヤする。 ・・・・なんだよ。
「いいねぇ、幼馴染み。ラブいなぁ〜」
「うざい」
いますぐ死ね、俺は瞳で英助にそう悟らせる。
「悠夜口悪いっ!!」
「あぁ、はいはい」
俺はつまんなそうにそれだけ答える。
つか、なんでまだ水那いんの?昼終わるぞ。
「悠夜今日、部活あるんでしょ?」
「・・・そうだけど」
部活・・・つっても“鬼狩り”の話し合いだけど・・な。
水那には俺が鬼狩りをやっている・・という話をしていない。
「じゃあ、先帰ってるね」
「いや、待ってろ。・・・・危ないし」
水那はキョトンとしていた。
最近、この付近にも出るんだよな・・・・。


「・・・また鬼が出るって?そんなはずないじゃん」
水那は笑う。
「・・・お前、いい加減信じろよ」
水那に鬼の話は何十回もしてきた。 だけどコイツは全く信じない。
・・・はぁ、本当にめんどくさいヤツだな。
「はいはい、出たとしてもあたし空手で黒帯とったし♪」
「地味に自慢すんな。俺は真面目に言ってんの」
っとに、心配してやってんのに自慢しやがって。黒帯とかそんなの関係ねえんだよ。


俺とか真田は、並みよりも身体能力はズバぬけてる。
・・・・理由は“宇津木”・・・クソ担任のせいなんだけど・・・。

言い争う俺たちをよそに、真田はパンの袋を開く。
「真田って今日『も』パンなの?」
俺は英助の言葉に振り向く。
「うん、作り忘れちゃって」
英助はふーんと言いながら、乱れた前髪をピンで留めなおす。
「いただき・・・・、・・?」
「・・やる」
俺は自分の弁当を真田に渡し、真田のパンを取り上げる。
「・・・浅葱君?」
「俺屋上で食ってくる」
俺はそれだけ言って、教室を出た。


「・・白石さん、食べていいの・・かな?」
「・・・・、あ、いいよいいよ!悠夜のだしね!」
何処か悲しそうに笑う水那。
「じゃあ、お言葉に甘えて・・」
・・・・罪な男だなぁ、悠夜は。学年で一位二位を争う女の子を独り占めなんて。
英助はフッと笑い、
「悠夜は今日『も』パンか」
と、一人呟いたのであった。