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Re: cross ( No.65 )
日時: 2010/08/26 12:02
名前: 水妖 (ID: 8hgpVngW)

「何故此処に生き人が居るのですか!?」
「お待ちなさい、七葵。・・・貴方、お名前は??」
「・・・ ・・・無い。捨てた。」

その少女は、死体の上には決して立たなかった。
眉根を寄せて、死体を見ない様に。
少女に護衛の様な女も同じだった。

「では、私がお付けしても?」
「・・・ ・・・。」

俺は、小さく頷いた。
少女は笑わない俺に、微笑みかけてくれた。
綺麗なその笑顔に、
つられて、微笑んだ。

「やっと、笑いましたわね。」
「・・・。」
「では、理人・・・で。」
「理・・・人・・・。」
「良い名を付けますね。お嬢様は。」

俺は、頷いた。
そして意味を問うた。

「理人、如何いう意味?」
「理人は、理の人。理とは、当然の理由。
 貴方がこの世に居るのは、必然・・・という意味を込めました。」
「理・・・。俺は、生きてて良いのか?」

少女は、コクリと頷いた。

「それもまた、必然ですから。」

太陽のように暖かな。
向日葵のように明るく。
少女は微笑んだ。

「お前、名は何と言うんだ。」
「・・・月読。詩賦月読ですわ。」
「そっちの女は・・・。」
「七葵。笠ノ月七葵。」




此れが、俺たちの出会い。






一度も抜けだす事が許されなかったこの塔から。






俺はようやく、一歩を踏み出した。