ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: cross ( No.92 )
日時: 2010/08/30 18:02
名前: 水妖 (ID: 8hgpVngW)

      ***



剣が義手に突き刺さる。
七葵は心臓目掛けてやった所為か、
外して顔を歪めている。

「避けないで下さい。」
「そいつぁ無理だろ・・・。」
「無理ではありませんよ?」
「・・・。」

カッターの刃を最大限に出す。
それを七葵の瞳に目掛けて押し出した。
見事に命中したが、
罪悪感に苛まれる。

「がっ・・・ぐぅ・・・。」
「・・・また、殺った・・・。」
「まだっ・・・まだ、殺られてませんよ??」

嘘だ。
もう虫の息の癖に。
目なんかやられたら、ショック死してもおかしくはない。
苦しめず、殺してやりたかったのに。

「はぁっ・・・に・・・逃げる・・・んですか??」
「逃げて、ねェよ。」
「後ろに、下がってますよ。」
「ただ、お前が遠近感掴めてねぇだけだろ。」
「・・・否定、出来ませんね。」

もう、楽にしてやろうか・・・。
正直、見るのが辛い。
七葵を見ていると、月読を想い出す。
想い出が、駆け巡る。

「もう、殺したりするのは、ここまでにしましょう?」
「あぁ?俺は、勝ち上がる。だから・・・すまん、守れねぇ。」
「そうですか・・・それは、残念、です。」
「気付いてるだろ。」
「何が、ですか?」

薄々感づいては居るんだろう。
あのcrossとかいう奴。
月読と、同じ様な感覚がある。
アイツの正体は、きっと。
俺達の望むものであろう、と。

「crossという奴、ですか。」
「あぁ。そうだ。」
「あぁ・・・私はもう駄目みたいですね。」
「・・・すまんな。月読を探す糧となれるんだ。本望だろう?」
「変な死に方は、嫌ですよ?」

・・・バカか、俺は。
助けてくれた恩人を殺し。
恩人の周りの奴等を殺し。
嗚呼、俺は、

         猛毒、だな。

「静かに、眠れよ。俺からの、最後の願いだ。」
「えぇ、すでに最悪ですがね。」

やはり、もう限界の様だ。
どうして、
涙が出るんだろう。
しょうもねぇなぁ。

「——最後に、餞別です。」
「え?」
「貴方は、猛毒とか不幸の種とか言ってましたけど——」





———月読様が求めていた、平和の象徴です。
       私が、保証します。
       彼女を、止めてください。




「おぅ。まかせろ。」




そうして、彼女は目を閉じた。