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Re: 鎖と闇 —解き放たれた呪術師— ( No.9 )
日時: 2010/08/25 21:03
名前: 十六夜 ◆aUgcx1Sc9Q (ID: COldU63y)
参照: http://白柊から改名しました。十六夜(いざよい)ですvv

数十分程経っただろうか。かなり長く歩いてミハエルはようやくとある一軒のマンションへと着いた。
先ほどまで他の建物には見向きもしなかったがそのマンションを見付けるとすぐ足を止める。
どうやら探している人物が見つかったらしい。ミハエルの顔には安堵感から来る疲労の表情が浮かぶ。
そして黒色のペンキで塗られてこそいるが塗装の剥げかかっている階段を登る。

ギシッ……ギシッ……

階段は相当古いらしく、登ろうと足をかけただけで奇妙な音を出す。
ミハエルは近くに居る住民が起きない事を願いつつなるべく静かに階段を登った。
そして1番上の階、4階へと着いて其処のフロアから探しているらしい名を探している。
4階の左端の部屋の看板へ目が行くとミハエルは溜息を着いてその扉を叩く。返事は来ないが居るのは確実だ。
中で何かを探すガタガタ、と言う音と騒々しく何かを片付けようとする音が充満していた。
ミハエルはそんな部屋の様子を想像して堪えきれなくなり、思わず笑い声をあげる。

「おい、居るんだろ……ナタン」

「ははは、悪ぃ悪ぃ! 片付けに手間取ってた」

ナタン、と呼ばれたらしき人物の声が扉越しに聞える。聞いてて心地の良い滑らかな声だ。
ミハエルはそんなナタンにまたかよ、と半分笑い半分呆れた表情でドアを見る。
暫くしてガチヤッと何かを開ける音がしたかと思うと扉が開きナタンが姿を現す。
外見は銀色の首まであるショートヘアに静かに光る深紅色の瞳。身長はミハエルより少し高い。
服装は色合いを除けばほぼ普通だ。つまり裏を返すと色合いがかなり悪いと言う事になる。
黒色の長袖を着ていて腰辺りには赤色の布が着いていて白色のズボンを穿いていた。
見慣れた顔なのか、親交が深いのか、ミハエルは柔らかな笑みを浮かべる。

「久しぶりだな……」

「そうだな。お前とはニューヨークで別行動して以来だし」

そう言い人懐っこい笑みを浮かべるナタン。どうやら彼とミハエルはかなり仲が良いらしい。
そして扉をさらに開け、中へ入るよう促すナタンにミハエルは頷いて家の中へと入った。
中はそこそこ整理されている風に最低限の物以外には何も置いていない程の殺風景の部屋だ。
しかし細かく見渡すと所々ゴミが散らばっていたり本が乱雑に置かれている。
急いで部屋を綺麗にしようとしていた事は間違いない様子。


「光の魔術師は本当に日本に潜伏してんのか?」

「あぁ、居るぜ」

ミハエルは部屋に入ると同時にナタンに問う。そしてきっぱりと返された。
それと同時に辺りに深刻な雰囲気が走る。