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Re: 鎖と闇 —解き放たれた呪術師— ( No.15 )
日時: 2010/09/09 13:15
名前: 十六夜 ◆aUgcx1Sc9Q (ID: COldU63y)

「まぁ、俺は良いんだけどね。悪人役慣れてるし」

ナタンはやや意味深に、語尾を強めてそう言うと床へと寝転がる。ミハエルはそんなナタンの言葉に気付いたのか少し不思議そうな顔をした。

「俺が悪人に向いてないとでも言いたいのか?」

「へ? はは、まぁね……ミハエルって結構無理するタイプだし。自己犠牲を厭わないタイプだろ?」

ミハエルは特に起こっている様子は無く、単に不思議に思ったのか首を傾げていた。そんなミハエルにナタンは呆れるかのように溜息を着く。否定は一つも出てこない事から、それは正しい事らしい。暫く不思議そうにしていたミハエルも勝手に納得したのか寝室へと足を運ぶ。どうやら今夜は泊まりに来た様だ。

ナタンはまだ、呆れた表情をしている。

そしてミハエルの方を向き、しかし聞えない様に呟く。


「ばっかだなぁ……いつもミハエルはそうやって全部背負おうとするんだからさ」

そう言うといきなりすくっ、と立ち上がりトレイと皿を片付けるとポケットから煙草の箱を取り出して其処から煙草を取る。どうやら彼には未成年禁止法と言う常識はこれっぽっちも持ち合わせていない様だった。
慣れた手つきで台所にあったライターで火を着けて咥える。灰色の煙が辺りを少し流れる。ナタンは顔をしかめず煙草を味わうと何処からともなく灰皿を取り出して火を消す。

「ガキの頃からあいつは全然変わんないよな。いい加減、少しは人に押し付けろっての」

ナタンはまるで誰かと話しているかのように自然に喋っていた。そしてまたも溜息を着いて肩を竦めてくすりと笑い台所を出た。

既にミハエルは寝室で寝ているのか規則正しい寝息が聞える。恐らく幼さを残す顔立ちをさらに幼く見せた寝顔で寝ているのだろう、とナタンは内心思いつつ寝室へと入る。案の定中には可愛いと言う形容詞の付きそうな寝顔をしたミハエルが居た。ナタンは起こさない様にと足音を出来る限り消して歩き、枕代わりのクッションと布団を取り出して寝室を出る。

「くれぐれも無茶だけはしないでくれよ……」

自分の一個しかないシングルベッドを恨みつつナタンは枕代わりのクッションの柔らかさを味わいつつ深い眠りへと落ちた。









真夜中の街は、もうじき朝を迎えようとしていた。

第一話 真夜中の街 終