ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜アビリティ・ワールド 第1章 断罪〜 ( No.18 )
- 日時: 2010/08/22 11:57
- 名前: 遊太 (ID: U3CBWc3a)
10【逃走】
校舎
窓ガラスが全壊した校舎へ踏み行った天馬は、2階へ続く階段を駆け上がる。
所々、壁が崩れ落ちて廊下に壁の破片が散乱している。
「あいつ・・・まだ教室いるかな?」
天馬は志村を倒すべく、再び1−2の教室に足を踏み入れた。
しかし、教室にはだれもおらず、床にガラスや照明灯の破片が落ちているだけ。
志村の姿はどこにもない。一体どこへ?
天馬は教室を一通り見ると、振り返り廊下を見る。
その時だった。
「・・・・お前は・・・海藤天馬という名前か?」
天馬の視線の先には、左肩から血を流した志村が立っていた。
どうやら、先ほどガラスの破片が散らばった時に切ったらしい。
「な、なんで俺の名前を・・・?言った覚えはない・・・ぞ・・・」
「ふふ・・・お前とは・・・いい友達になれそうだよ・・・」
志村はそう言うと、無傷の右手を刃物に変え、コンクリートの壁を簡単に破壊した。
「さらばだ・・・また何れ・・・会うだろう・・・・」
志村は天馬に言い残すと、壁を破壊した穴から外へ出て行った。
「お、おい!!」
天馬が追いかけようとした時だった。階段から聞きなれた声と足音が聞こえる。
「天馬君!!」
階段の方を見ると、亜樹、算介、三郎の3人が汗だくで天馬に駆け寄ってきた。
「大丈夫か!?怪我はないか!?」
「は、はい・・。それより、クライムらしき男が学校を・・・」
「分かってる。能力のことは運良くばれてないみたいだな!!」
天馬は三郎の言葉で、七海の存在を思い出す。
「はい、能力についてはばれていません。」
七海のためだ。こういう時、能力の存在を知った人間は殺される運命のはずだ。
映画の中でよくある。だから、真実は伏せておこう。
「とりあえず、今生徒たちは自宅へ強制帰宅になってる。君も戻れ。」
三郎はそう言うと、亜樹と算介と共にその場を後にした。
「七海・・・・」
天馬はその場にしゃがみ込み、不穏な空気を漂わせたまま終わった戦いに安堵の息を漏らす。
「天馬・・大丈夫か?」
天馬は突然の声に驚き顔を上げた。
先ほど三郎達と行ったはずの算介が、天馬の前に立っている。
「算介さん・・・」
「算介でいいよ。年齢はそこまで変わんねえんだし。それより、志村と会ったか?」
算介は天馬の隣に座りながら質問するが、天馬は首を傾げて復唱する。
「志村?」
「両手を刃物に変える奴だ。」
「あ!!会いました・・・あいつ、強いですね。」
天馬は自分の手を見ながら、込み上げる悔しさと負けず嫌いの意地を堪える。
志村は強い。恐らく、あの左肩の怪我がなければ、自分は殺されていただろう。
「奴ら、たぶんこれで終わらせる気はない。」
「え?」
天馬は算介の言葉に言葉を失う。
「クライムはこんな意味のないことをしない。恐らく、違う目的があるはずだ・・・」
「違う目的って・・。ここを狙ってあいつらが得するようなことって・・・」
天馬は頭を捻って考えるが、どう考えても結びつかない。
「例えば、ここを狙ってどこかを襲撃するとか?よくテレビでありますよね。」
「襲撃って、別に・・・・・」
2人はその時、目を合わせて最悪の事態を予想してしまった。
「ま、まさか・・・本当の狙いは・・・・」
超能力専門会社‘アビリティ’______