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Re: 〜アビリティ・ワールド 第1章 断罪〜 ( No.27 )
日時: 2010/09/03 21:50
名前: 遊太 (ID: U3CBWc3a)

14【移送任務】


百宮学園高校襲撃 翌日


天馬は学校を終えると、すぐ様会社へとやってきた。
朝早く携帯にメールが入り、新しい任務ということしか聞かされていない。
「おっ!天馬、大丈夫だったか?」
天馬が会社前に着くと、会社のエントランスで煙草を吸う三郎が立っていた。
「今から6階のAチーム専用ミーティングルームにこい。そこで、任務の詳しいことを話す。」
「分かりました。」
天馬は三郎に一礼すると、ロビーの中へと足を進めた。
会社内はクーラーが効いており、とても快適に仕事をできそうな気がする。
天馬はそんなことを思いながら、エレベーターに乗り6階を目指した。


**********


6階 Aチーム専用ミーティングルーム


デスクが4つに書類や資料が積まれた棚がある部屋に、天馬はノックをしながら入室した。
「よう、天馬!!」
部屋の中には算介しかおらず、天馬は算介に挨拶しながら椅子に座る。
「亜樹さんは?」
「学校じゃね?三郎先輩はタバコ吸いに行ったし・・・」
算介が言ったその時だった。

「おーす!始めるぞ!」

三郎は亜樹と共に入室し、そのまま三郎だけが3人の前に立つ。
「やあ、天馬君。」
「こんにちは。」
天馬は亜樹の純粋な目に胸を動かされる。いつ見ても綺麗な瞳だ。
「任務の説明を始める。今回は移送任務だ。」
「移送任務?」
算介が首を傾げながら質問する。
「先日、社長と円と紅月が捕まえた火山隼人。彼をNPSに移送し、速やかに入獄させる。」
天馬は‘NPS’という言葉に疑問を抱き、隣に座る亜樹に問う。
「NPSってなんですか?」


「国家機密刑務所。英語で略してNPS。」


天馬はその言葉を聞き、あることに気付いた。
国家ということは、政府は能力者の存在を知っているのか?
質問しようとしたが、三郎は任務の説明を続けた。
「火山隼人は社長たちの戦闘で両手の神経を負傷し、能力は使えない。まあ、安全のために手足は拘束する。」
「雪里ちゃんの能力使えば早くないですか?」
亜樹の言葉に、三郎は首を横に振る。
「あいつは任務で北海道にいる。こちらに戻るのは1週間後だ。武器重装備の移送車で運ぶ。」
三郎は自分のデスクの上にある資料を取り、目を通しながら説明を再び始めた。
「NPSは千葉港にある。そこまでは渋滞に出合っても3時間はかかるが、そこまで注意ポイントを言うぞ。」
三郎はデスクの上にある数枚の写真入りの紙を、部屋の前にあるホワイトボードに付ける。
天馬たちもそれを目で追う。
「まず、一つ目はレインボーブリッジ。移送車は目立つので、狙われやすい。」
三郎は次の写真を指さす。
「2つ目は千葉マリンメッセスタジアム。ここは移送当日にアイドルのコンサートがあり、かなり混み合う。奴らも紛れている可能性が高い。」
天馬は三郎の言葉で、朝友人の日高がそんな話をしていたことを思い出した。

「今度、千葉でRIGHT Nineのコンサートがあるんやで!!」

天馬はアイドルに興味もないし、そこまで関心も持てない。
すると、算介は大声を出してポケットから一枚の紙切れを出した。
「お、俺、そのコンサート行く予定・・・」
「任務が優先だ。あきらめろ。」
算介は三郎の言葉がかなりショックらしく、一瞬で暗い状態になった。
そんな算介にもかかわらず、三郎は説明を続ける。
「後は細かいポイントを注意して見といてくれ。メンバーはこのAチームと、村佐円、木枯紅月だ。」
天馬は任務予定日を見ると、夏休みにすでに入っている時だと気付く。
高校に入学して早8ヶ月。
こんな非日常が自分に来るとは思ってもいなかった。

しかし、今が人生一番楽しい時だ。

天馬は資料を手に取り、笑顔で窓から外を見る。
「任務、頑張るぞ!」