ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ━ESP━第1章 選ばれし能力者 ( No.5 )
- 日時: 2010/08/20 20:10
- 名前: 遊太 (ID: U3CBWc3a)
03【クライム】
放課後
天馬は学校の裏に行くと、一台の黒い車が止まっていた。
窓が開くと、見慣れた顔の松本亜樹が助手席から現れた。
「早く乗って。見られたらまずいでしょ?」
「は、はい!!」
天馬は急いで後部座席に乗り込んだ。
運転席には、髪を青く染めオールバックで整えている若い男性が座っている。
「はじめまして。俺は本井三郎だ!!よろしくな!」
本井は感じのいい笑顔で振り向き、天馬と握手を交わす。
「俺は海藤天馬です。よろしくお願いします。」
天馬も自己紹介をすると、車は会社に向けて動き始めた。
「ところで、乗る気にはなったの?」
高速道路に入った途端、亜樹が振り向いて天馬に聞いた。
天馬は何も言わずに、力強く縦に首を振る。
「そう。分かったわ、じゃあさっそく仕事よ。」
「仕事?」
天馬は亜樹の言葉を復唱して首を傾げた。
すると、運転をしている三郎が仕事についての説明を始める。
「犯罪者の討伐、及び執行だ。能力者の犯罪者な!」
「でも、どうやって能力者が犯罪を犯したって分かるんですか?」
「能力を使うと、その場には微量の放射能が残る。近場の現場は俺らが足を運んでそれを調べている。」
天馬は説明を聞くと、学校の勉強よりも分かりやすいと思った。
「大方分かりました。で、その仕事内容は・・?」
「一之瀬高校生徒暴力事件よ。」
天馬はその言葉を聞くと唖然とした表情をする。
確か、今朝のホームルームで担任が話していたことだ。
「あれって能力者の仕業ですか?」
「えぇ。被害者からの証言によると、特徴は紫の髪に、触れずに攻撃したらいいわ。」
「ふ、触れずに?」
天馬は自分の炎を扱う能力しか知らないので、その話にはかなり興味がある。
「まぁ、詳しいことは会社に着いてからだ。」
三郎はそう言うと、エンジンを強く踏み会社へと目指した。
**********
超能力者専門会社‘アビリティ’
会社の前に車は止まり、天馬、亜樹、三郎はすぐに社長室へ向かった。
社長室に着くと、すでに社長は仕事に必要な資料をまとめて席に座っていた。
「よく来たね!!その様子だと、天馬君はここで働くつもりかな?」
冥堂は天馬の生き生きした表情を見て察知したようだった。
「はい。お世話になります。」
天馬は大きくお辞儀をすると、冥堂は頷きながら仕事の資料を渡した。
「これが今回の?」
「うむ。どうやら、犯人はクライムという男らしい。」
「クライム・・・・?」
三郎は聞いたことのある言葉に頭を捻る。
「罪・・・・っていう意味よ。」
高校生の亜樹が言うと、三郎は思い出したのか納得する。
「彼は東京の渋谷区。この区に住んでいるようだ。」
「ならば、今すぐにでも行きましょう!!」
三郎は3人に言う。しかし、社長がすぐに止めた。
「ダメだ。さっきほかの社員から聞いた情報だが、彼以外にも能力者がいるらしい。」
冥堂の言葉に全員は表情を変えた。
「ほ、ほかって、クライムという能力者以外にもですか!?」
「あぁ。草屋の情報だ。間違いないだろ。」
天馬は‘草屋’という人物が気になったが、ここは質問するのを止めた。
「気をつけて行って来い。」
「了解。」
**********
3人は車に戻ると、資料に目を通す。
「ところで、天馬君は家に帰らなくても大丈夫?」
三郎の質問に、天馬は笑顔で答えた。
「明日は土曜で何もないから、友達の家に泊まるって言ってきたんで大丈夫です!!」
「そうか。で、場所はどこら辺りだ?」
三郎が助手席でクライムの住所を確認している亜樹に質問する。
「え〜っと、ここから1キロ弱の地点。」
「よっしゃ!」
三郎はエンジンをかけ、目的地へと車を走らせた。