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Re: 銀の炎 ( No.11 )
日時: 2010/09/12 19:06
名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: hAtlip/J)

第6話 『応急処置』

女の子が出血し、倒れているではないか。

その隣には巨大な野獣、トラが1頭、女の子の周りをうろうろしている。


このままでは!クロムはすかさず矢を投げた。(右腕を負傷しているので、弓は使えなかったのだ)
トラこそには当たらなかったが、トラはもの悲しげに一吼えし、どこかへ消えていった。

なんて物分りのいい奴だ、とクロムの身体は一瞬だが脱力を覚えた。
だがクロムはそんなことはしていられない、小さな少女の方へ駆け寄り、
「おい、おい、大丈夫か」と肩を叩いた。

少女は気を失っているだけ、少し声が聞こえた。クロムは少女の右腕を見た。
しまった、トラに咬まれたのか。クロムはバックの中から救急用具、
といっても透明な袋の中に予備の袋、絆創膏、4つ切れの湿布、
包帯、ポケットタイプの消毒剤、数枚のタオルだけだ。
クロムは予備の透明な袋を取り出し、タオルを少女の傷口を塞ぎ、
クロムは左手に袋をかぶせ、傷口をタオルで圧迫した。

だが、出血は止まらない。咬み傷で、傷口がやや大きめだからだ。
クロムはタオルを丸め、傷口よりも心臓に近い位置でタオルを巻き、止血した。

しばらくして、出血は大分おさまった。クロムは少女を担ぎ、近くに家がないかどうかを探した。
だが、このごつごつした地形には、家が1軒も見当たらなかった。

それに辺りは暗い、よく見えないのだ。
そしてもっと下っていかないと、一つの村落へはたどり着けないであろう。


空が少しずつ白みかけた頃だ。クロムは途方にくれ、少女の腕からタオルを取り、
包帯をしたが、決して少女から離れなかった。
まだこの付近に猛獣がいるかもしれないから。

クロムも眠気と戦いながら家を探し当てたが、1軒も見当たらない。




とうとうクロムも睡魔には勝てず、
ふらふらと辺りをさまよいながら、小さな家、空き家でも小屋でもいい
何か安全で横たわれるところを……

少女を木陰に寝かせ、クロムはその近くで疲労と睡魔でばたりと倒れてしまった。


ちくしょう、もうすこしで…クロムは意識もうろうとしながら、視界に映る草をぼうっと見ていた。


そして若者も、そのまま目を半開きにしながら、意識が遠のいていった。