ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 銀の炎 ( No.14 )
- 日時: 2010/09/13 18:48
- 名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: hAtlip/J)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
第7話 『救出』
クロムは睡魔と疲労に負け眠ってしまった。
本当は眠らず少女を助けたかった。
なのに…自分が情けなくて情けなくて、唇をかみ締め、
やっとのことで堪えた一筋の涙をこぼしながら、眠ってしまった。
その直後だ。
(……です……か………)
クロムははっと目を覚ました。最初は訳が分からなくて、横にあった剣を構える。
だが余りにも疲労で、腕を起こすことしかできなかった。
次第に目のピントが合い、一人の少年と目が合った。
少年は癖毛のついた短い金髪、穏やかな灰色の目、ごくごく普通の体型をした、
クロムよりも少し年上の少年だ。
少年は穏やかに喋った。
「あ、驚かせてしまったようですね、私は近くの診療所で働いています、
大分疲れてらっしゃいますね、良かったら私達の診療所へおいでになってください」
その穏やかさと丁寧さに、クロムは警戒を解き、剣を収めた。
だがクロムは疲れきっている。少女を担ぐことは愚か、歩くこともままならない。
すると少年は言った。
「大丈夫ですか、今何か持ってきますね」
少年は後ろを向き、走っていった。しばらくして、1頭の馬と袋を抱えた少年が来た。
「生理食塩水です。どうぞお飲みになってください」
クロムは少年と2人で少女を抱え、馬に乗せた。
次いでクロムも乗り、少年が馬を引っ張っていった。
東に向かって少年は馬を歩かせた。
そして5分足らずで少年の診療所についた。
診療所とはいえども、ごつごつした岩にドアが取り付けられ、丸い窓が見えるだけで数十個だ。
少年は説明した。
「ここジョレントスクは地形を利用した、岩で出来た住宅が多いんです。盆地のところは別ですが」
少年はゆっくりとドアを開けた。
最初に見えるのは、壁紙が張られてあって、オルゴールのBGMもあり、
長いすが均等に並べてあるので、外側の感じとは異なり、清潔感ある待合室だ。
真っ直ぐ見ると受付の窓口、左に曲がると診察室および処置室、
右へ曲がると廊下と階段があり、廊下をずっと行くとリビング、
階段を昇っていくと入院棟へ繋がり、地下へ行くと検査室へ繋がる。
少年は辺りを見回しながら言った。
「先生がいらっしゃるまで少しお待ちいただけませんか」
少年は長いすに、少女を横たわらせた。クロムは力なくうなずいた。
少年は急いで先生を呼びに行った。
数十秒で少年と灰色のあごひげを生やした男性が診察室から出てきた。
男性はさほど背が高くないが、温厚な目つきをしいる。
男性はクロムを見て話しかけた。
「ああ、お前さん、大分疲れているようだが、歩けるかね?」
クロムはゆっくりと首を振った。何かをいいたそうだが、
唇はなにかで押さえつけられているような感じで、上手く話せなかった。
男性はクロムの腕を掴み、肩を担いで診察室へ急いだ。
すると急に振り向くや否や、少年に言った。
「ノマリ、その女の子も同じく診察室へ運んでくれないかね」
「はい、先生」
診察室で男性はクロムに言った。
「君がこの少女の手当てをしたから、少女は大事にいたらなかったよ。
さあ、処置は終わった、ゆっくり寝ていなさい」
クロムは安心したのか、ゆっくりと目を閉じた。安心した寝息が聞こえてくる。
クロムが起きたのは、その18時間後の事だった。