ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 銀の炎 <<オリキャラ募集>> ( No.18 )
日時: 2010/09/25 21:32
名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: t5agwx1g)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode

第9話『お嬢さま』

エーデルが目を覚ましたのはその3日後だ。

エーデルは重傷を負ったのにもかかわらず、生きている。
だが両手両足にはしっかりと鉄の鎖で拘束されていた。

エーデルは辺りを見回すと、どうやら広い倉庫のようだ。
スクラップになったロボット、1m四方の木箱が山になって積まれている。

エーデルが真っ直ぐ向くと、その200m先に一つだけ大きな扉がある。
扉の周りには黒と黄色のシールが張られ、その上には赤いランプがついている。

エーデルは他にも扉があるかどうか見回してみたが、
この大きな扉のほかには何も無かった。
その扉に注意を払いながら、この鎖をどうにかなるか試してみた。

だが、びくともしない。ただ空しく鎖と鎖がこすれる音が響き渡る。
その鎖の音を聞きつけたのか、赤いランプが点滅し、扉が開いた。
その扉は何重にもなっていて、一つ扉があると、さらにまた一つと扉が重なっていた。
そして、最後の扉が開くと、エーデルは目を見開いた。

最初に出てきたのは、角の出でたヘルメットを被っている動物だ。
そして次から次へとエーデルの周りを呻りながら取り囲む。

そして白い甲冑を身にまとった人が4人、外側の四方を向きながら出てきた。
護衛をしているかのように、ショットガンを持ちながら警戒をした様子だ。
真ん中には、顔をすっぽり隠した兜を被り、そして黒いマントを身に着けた怪しげ、
いや、いかにも悪党な感じの人がのしのしとエーデルの方へ近寄る。

そして低い声で馴れ馴れしくエーデルを見下しながら言った。

「気分はどうですか、お嬢さま」

エーデルは殺気を帯びた目線でぎろりと睨む。
そして近くのヘルメットの狼を蹴飛ばした。
その蹴飛ばしたコンマ1秒もしないうちに別のヘルメットの狼は吼え、
角でエーデルの首に突きつける。

エーデルはうと呻いたが、黒いマントの人物に目線は変えない。

「お前が私を拉致したのか」

黒い人物は顔を兜で隠しているのにも関わらず、笑みが浮かんでいるように見える。

「はっはっは、いかにも……17歳のわりにはカンロクがありますな、エーデルお嬢さま」

エーデルのことを知っているのか?
名前も年も知っているではないか。それを裏付けるかのように黒い人物は言い続ける。

「ジョレントスクの北西に位置する金持ちの町、
メルーンでエーデルお嬢さまがお生まれになったんだろう?」

エーデルの瞳は怒りで満ちているが、冷静に答えた。

「何故私の出身地を知っている」

「おっと、ドレット大学の教授の息子に、そんな言い草は無いだろう、エーデルお嬢さ……」

エーデルは急に怒鳴った。

「うるさい!お前にお嬢さまと呼ばれる筋合いなど無い、
私にはドレット大学だろうが何だろうが関係ないのだ!」

今まで馴れ馴れしかった自称ドレット大学の教授の息子は、急に態度が一変した。

「黙れ!小鳥のようにこざかしく喋りやがって、二度と喋れなくすることだって出来る。
貴様の命は俺様が握っているのだ。貴様には状況を把握できるかと思ったが、
うるさく吼える汚い野良犬と同等だ」

エーデルはゆっくりと頭を垂れ、
今は無力な自分に、唇をかみ締めざるを得なかった。