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Re: 銀の炎 <オリキャラ募集> ( No.21 )
日時: 2010/09/28 17:24
名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: t5agwx1g)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode

第10話 『朝』

数日後、すっかり元気になったクロムは、リビングを訪ねた。
ここの主治医、シーボルトがにこやかに笑った。

「クロムかね、調子はどうだ」

「はい、シーボルト先生。おかげさまで」

クロムは少し体操をして、シーボルトにクロムの元気を見せかけた。

「そうか、それは何より」

シーボルトは温めた食後のミルクを片手に、クロムもここに来るようジェスチャーをした。
クロムはシーボルトと向かい合わせになるように椅子に座った。
シーボルトはクロムに朝食を差し出した。
皿には目玉焼き、サラダ、パン、牛乳と、朝食らしい朝食だ。
シーボルトはクロムに話した。

「単刀直入だがクロム、お前さんに会いたいという人がいるよ」

クロムが喋ろうとすると、口に詰め込みすぎたパンがぼろぼろと落ちた。
それをみてシーボルトは愉快そうに笑う。

「まあまあ、急がずに急がずに。今お前さんに会いたいという人を連れてくるから」

シーボルトは食器を片付けて、病棟へと向かった。
クロムは今のうちに落ちたパンくずを拾い、口についたケチャップも拭った。

クロムはふと少女のことを思い出した。
そういえば少女の名前を聞いていない。
もしかしたらシーボルトが連れてくる人物っ……
シーボルトの隣についてくる人影……クロムの予想は的中。


顔の血色もすこぶる良く、右腕には小さな範囲だが包帯が巻かれていた。

「クロム、ありがとう」

急に少女は笑みを浮かべ、クロムにお礼を言った。

「あっはっいやあ……男なら当然のことをしたまでですよ!」

お礼の言葉で顔を赤くしたクロムの言葉が、ついつい敬語になる。
クロムより明らかに年齢が下なのに。

少女は髪の毛を触りながら俯き加減で言った。

「あたし、ハヌーネ。クロムのことは、ノマリから聞いたわ。
私死ぬところだったんでしょう?どうお礼したらいいかな」

「いやいやいや!僕は……その……あなたが野獣に喰われそうだったから。」

ハヌーネは目を丸くし、髪の毛を触る手がとまった。
自分が獣に食べられそうだったなんて、思いもよらなかった。
でも、ここら一帯は、トラやノーザンパンサーがうろついているのは、ハヌーネも周知だった。

「そうだったの……気が付かなかったわ。やはりクロムには何かお礼をしないと。
そうだ、私の妹がここにいるから、連れてくるわ。ちょっと待ってて」

クロムもハヌーネの元気な姿を見て、心から胸を撫で下ろした。
手が宙に浮いたままだが、手を戻して、食事を進める。
目玉焼きをフォークで切り、口に運んだ。

「クロム、私の妹よ」

クロムは振り向くと自分の顎が外れそうになるぐらい下唇がものすごいスピードで落ちた。
体全身が硬直し、そして目玉焼きの半熟だった黄身が、クロムの口から滴り落ちる。

そしてクロムの唇が痙攣する。

「こここここここ、こ、これ………」