ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 銀の炎 <オリキャラ募集> ( No.35 )
- 日時: 2010/10/09 21:54
- 名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: EUGuRcEV)
- 参照: http://www18.ocn.ne.jp/~no3880/ww-baselard.html
第11話 『動物』
クロムは危うく椅子からこけてしまうところだった。
だがクロムは目を見開き、体全身に冷や汗が出る。
「何驚いてるの?私の妹なのに」
「だだだっだって、ト、トラじゃないか」
クロムは驚きを隠せない。
それもそのはず、ハヌーネが気を失っている時、
ハヌーネに近づいている野獣がまさにそのものだった。
そのトラの体長は尻尾を除いてざっと2mを越しているのだ。
そして犬歯も口から少し出ている。
「トラって、ハヌーネが気を失っている時、こ、こいつがハヌーネの近くにいたんだ!」
「あら、そうなの!」
ハヌーネは慣れた手つきでトラの頭をなでた。
そして独り言のように少し呟いた後、トラの紹介をした。
「この子はアルト。私のお姉ちゃんが拾ってきたの。だから私とお姉ちゃんとで育てたんだけど、
シーボルト先生に定期健診で丁度入院していたのよ」
「ひ、拾った?トラはそこらのイヌとは違うじゃないか!
懐きもしないしこんなにデカかったらいつ暴れるかわかんないよ」
「クロム、そう吼えるな。」
シーボルトがクロムを宥めると、シーボルトは自分の家の見取り図を棚から取り出してきた。
「わしの病院は動物病院兼診療所だ。そのほかにも動物を入院させていてね、慣れるといいぞ。」
「・・・・・・本当に噛まないのか?」
クロムはおずおずとハヌーネに尋ねた。ハヌーネはアルトにおすわり!と命じた。
「万が一噛むような真似をしたら、身を引かないでじっとしててね」
クロムも男だ。肝をすえ、震える手を伸ばし、アルトの体を恐る恐る触った。
アルトは笑っているかのように、喉を鳴らした。
クロムの手の緊張が少しほぐれた。
シーボルトはクロムに、動物の入院棟を案内した。
獣臭が鼻につくが、クロムは黙ってついていった。
入院棟には駝鳥、カンガルー、ナマケモノ、ヤマネコ、ヘラジカ、オオカミと、様々な動物がいた。
包帯を巻かれていたり、昼寝していたり、威嚇をする動物までいる。
「これらの動物は、ペットだったり、野性だったり。野生のものは、
人間から受けた傷がほとんどだ。ペットも対外は、逃げ出したものだ。
それを捕獲するんだ。ジョレントスクの生態系を崩すと後が怖いからな。
そして、ジョレントスクに生息する奴は、元に戻したりする。
別の場所から来た奴は、引き取られるか、ここで死ぬかだ」
クロムは始めてみた動物に興味津々だ。クロムも所詮、田舎者だからだ。
シーボルトはクロムの目を真剣に見つめる。
「クロム、お前さんは、この後どうするつもりだ?
この国の人は、別の国の人にやけに冷たいものでね。
ここで交換条件はどうだ。
私も人手がほしくてね、クロムがここで動物達の世話をしたりしてくれたら、
ずっとここにいてもいいぞ。」
そういえばクロムも後々何処へ行くか何も決めていなかった。
そしてシーボルトは暖かく歓迎してくれた。ここにいてもいいかな、と考えが過ぎる。
クロムはしばらくここにいることにした。