ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Real? ( No.4 )
日時: 2010/08/20 12:13
名前: 騎士学 ◆wWr1IKfGtA (ID: hAtlip/J)


しばらくして、ジャック医療グループが駆けつけた。
医療グループ達は、ケルゲンに言われることも無く、手の消毒をし、
医療器具の熱湯消毒、マスクをかぶるなど、せっせと準備を進める。
もうこのときを知っているように。

そのなかで、準備を終えたケルゲンは、ジャックを見るなり、顔に僅かだが笑顔が浮かぶ。


準備が出来たようだ。
「これより大脳部分切除およびケルゲン式骨髄増殖を始める」

ケルゲンは持っている試験管を機具の中に入れ、スイッチを押し機具が回転した。
高速に回転し、それが終わると、ペーター・ガガーリンが試験管の中身を取り出し、
顕微鏡を見ながら作業を進めていった。


執刀を進めるドレークは、頭蓋骨の一部を取り出した。

「頭蓋骨切開完了しました、ケルゲン教授」

「よし、後は私に任せておけ」

バトンタッチしたケルゲンは、ペーターの作業を注意深く見る。ペーターは一息ついた。

「増殖、変換完了です」

「よくやった!手術が終われば、お前は推教授に任命しよう」

ペーターを督励し、その液体を注射器に移すと、
ケルゲンはそれをジャックの大脳の中に慎重に、丁寧に注射をした。
ケルゲンはジャックの皮膚を縫合し終えると、ジャックを集中治療室に移す。

「術式完了。スタッフならびジャック医療グループに感謝する」

その後、ケルゲンは一息つく暇も無く、ジャックを見守った。
1日、3日、1週間、3週間、2ヶ月と、刻々と時が過ぎていった。
約5ヶ月が経った後、ジャックは目を覚ました。それをみたケルゲンは歓声を上げる。
固くジャックを抱き、涙を流す。

「これほど時を待ったことは無い、ジャック、私が誰だかわかるかい?」

ジャックは正直何が起きたか分からなかった。
だが、潜在意識の中で、この人が何をしたかは切れ切れ覚えていた。
喋ることができないが、何かは言いたそうだ。
ぶるぶると口を開け閉めするジャックにケルゲンは涙ながらに言った。

「そうあせることは無い、ゆっくり時間をかけようじゃないかね?」

ジャックはこの言葉に目を細くし、少し笑った。
そしてゆっくりうなずいた。ケルゲンにとって、これは歓喜のことだが、
後になって思いもよらぬ事件が起こることとは—