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Re: Real? ( No.5 )
日時: 2010/08/20 16:36
名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: hAtlip/J)

第2話 『拉致』

草木も眠る丑三つ時、あることが起こった。
少女が2人、何者かに襲われていた。

こんな真夜中にと思うだろうが、この何者とは、頭にヘルメットを被っていて、
さながらユニコーンのように角が勇猛に突き出ている。
小柄なオオカミで、この少女を拉致するようにと上から命令されているのだ。

少女とはいっても、背の高い、亜麻色の髪の少女だ。
名はエーデルと言い、目は光り輝く透き通ったエメラルド色で、
よく頭が切れるものだ。

小柄のオオカミの動きを確認しては、オオカミを惑わして時間を稼いでいる。
もう一人の少女は、さほど背は高くないが、
茶褐色の髪で、目も同じ色をしている。
この少女、ハヌーネは、右腕を負傷して出血しているが、懸命に逃げている。

ごつごつした岩場を飛び越え、くぐり抜け、とうとう崖に追いやられてしまった。
ハヌーネはとうとう力尽き、倒れこんでしまった。
出血はひどく、右腕ほとんどが真紅に染まっている。
エーデルは懐から小さな小刀を取り出した。
小刀といっても、彼女の手のひらに納まるほんの小さな小刀だ。それをハヌーネに託す。

「いいこと、これを私の分身だと思って。
絶対に無くさないこと。誰かに手渡したりしないこと。
困ったときはこれに願いをかけるの。いい?困ったときだけよ」

念を押し、ハヌーネの掌に握りさせ、エーデルはオオカミに襲い掛かった。
最初はオオカミも戸惑った。エーデルはスピードがある。
オオカミが戸惑っているうちに蹴りを2発、3発と食らわせ、パンチまでする。
女の子とは言えないほど勇敢で、勇気ある行動だ。


だが、次第にエーデルも疲れが見え始め、とうとうオオカミがエーデルの後ろに回りこみ、
オオカミが懇親の頭突きをエーデルにお見舞いした。
ユニコーンの角がエーデルの腰に刺さった。エーデルは倒れたが、懸命に立ち上がろうとする。


そこですかさずオオカミは体当たりをし、エーデルは立てなくなった。
オオカミはエーデルを担ぎ上げ、何処かに去ってしまった。
ハヌーネは意識朦朧としながら、エーデルの名を呼んだ。


「エーデル……姉さん………」

もう1匹のオオカミはハヌーネに狙いを定めた。
殺気を感じたハヌーネは、早速エーデルに託された小刀を握る。





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