ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 銀の炎 <オリキャラ募集> ( No.53 )
日時: 2010/10/24 18:22
名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: EUGuRcEV)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode

後編

長い沈黙の中、クロムが口を開いた。

「そうか……で、ここの暮らしはど、どうだ?」

「サーカスで鞭打たれるよりはずーっとマシだわ」

スクイックは舌を出した。ふっと口元をゆがめたが、クロムは本気そのものの顔をして、
リュックから本を取り出し、パラパラとめくり、そこのページにドックイヤーをつけた。

「ねえ、町へ戻って普通の暮らしをしたくはないのか?」

「じきにサーカスの人が来て、酷い仕打ちをするだけよ。それにコソコソと暮らしたくはないの」

スクイックは立ったまま、軽く背伸びをした。
そして、台所にクロムの食器を片付けに行ったのだが、足の動きがどうもおかしい。

クロムはその動きに、確信を得たような感じがした。

「僕には借りが出来たからな、君は、魚鱗癬という皮膚病……
君の動きがぎこちないのも、四肢の外側にできるからだ」

スクイックは後ろを向いたまま、食器を洗っていたまるで、興味の無いように。

「あなたはウィザードなの?
くらこの町が医療に自信があっても、出来ないことだわ、人間には治せない病気があるってのに」

「なんでそういう風に言うんだい」

「だって、お母さんが苦しむ羽目になったのは、私の病気が治らなかったからよ!
痛い注射を刺されたり、意味の無い湿布を貼らされたのよ」

クロムは、ベッドから腰を上げ、ドックイヤーをつけた記事をスクイックに見せた。

その一部分がこれだ。

魚鱗癬
皮膚の表面が乾燥して、角質層が魚のうろこのようになり、剥がれ落ちる状態を示す皮膚病。
その大体は、遺伝子の異常によるもので、皮膚表面角質の形成障害が原因と考えられている。

……(中略)

今の医学では、根本的に治す治療は無く、骨髄から皮膚の細胞を人工的に増殖し、
患部の皮膚を取り除き、培養した皮膚を患部に貼り付けるのが、今の療法となる。
この療法は、自分の体の一部分を使うので、拒絶反応の可能性はない。

スクイックは、これが何のことか分からないのか、また食器を洗い始めた。
クロムは、スクイックの腕を掴んだ。

「僕の知り合いに、医者がいるんだ。君の病気を治してくれるかもしれない」

「約束したって、ここには私の仕事があるの。無理にきまっているでしょ」

「うん、ここに僕の医者を連れてくるから、それならどう?」

スクイックはいよいよ頭にきたのか、食器を荒々しく置いた。

「いいかげんにしてよ、これ以上なにか言ったら、ユキヒョウの餌食にするわよ」

ギィーとログハウスのドアが開いた。ちゃっかり座っているユキヒョウがいたのだ。
クロムは一瞬どきっとしたが、いかにも平気そうに振舞った。

「アタシ、ユキヒョウの保護活動をしているの。食べさすなんて、簡単なんだから」

クロムは一回咳払いをし、方頬が上がった。

「僕の先生はウィザード、僕は弟子さ」