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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Real Flame... ( No.7 )
- 日時: 2010/09/08 19:03
- 名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: hAtlip/J)
第3話 『何者』
オオカミはハヌーネに飛び掛った。
自慢の角で止めを刺そうとするのだ。ハヌーネは覚悟した。
もう動けない身体に覚悟を感じた。
オオカミは倒れかけの少女なぞ一突きでいけるものだ。
だが、もう一突きでいけるはずの距離まで近づいたところで、
何故だかオオカミはふっ飛ばされてしまった。
無論ハヌーネにはそんな力なんて無い。ただ目を閉じて覚悟を決めているだけだ。
右手には小刀を握っているが、その小刀が煌々と光り輝いているのだ。
その異変にハヌーネは気づいた。ゆっくり手を開く。
間違いない、煌々とオレンジ色に光っている。
そのあたたかい光と温もりは、昔感じたことのある……だがハヌーネは思い出せなかった。
でも無性に懐かしく感じるのだ。
ふっと笑みがハヌーネに浮かぶ。
なんも力のない笑みだ。
ああ、オオカミのことだが、角が真っ二つに折れていて、倒れていた。
もう虫の息で、じきに息はなくなるだろう。
仲間はそのオオカミの身体のにおいを嗅いで、尻尾を巻いて一目散に逃げていった。
ハヌーネは助かったと思ったが、それとは裏腹に、衰弱していく身体を横たえる。
もう自分が最後の地点にいるのだ。
悔いはあったが、もう何も出来ないことで、空しさと共に涙を流す。
そして、ゆるやかな風が吹く中、少女が静かに身を横たえている。
そこに、獣が寄ってきた。大きな顔で、ハヌーネのにおいを嗅ぐ。
獣臭い息がハヌーネの鼻に当たり、身をすり寄せて来たが、小さな女の子は動かなかった。
獣は喉を鳴らしながら何度何度も身をすり寄せたが、
ハヌーネは動かない。とうとう、もの悲しげに吼えはじめた。
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