ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 銀の炎 <オリキャラ第1次採用決定> ( No.70 )
- 日時: 2010/11/03 21:53
- 名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: EUGuRcEV)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
第18話 『オペ』
「さあ、横になりなさい」
シーボルトと、その他数名のリアルロイドが、オペの準備をした。
そして、スクイックは横になり、クロムはスクイックの前頭部と後頭部に電極を貼り付ける。
「通電開始!」
シーボルトの合図で、リアルロイドは医療器具にスイッチを入れた。
それと同時に電極から電流が流れた。
スクイックは大きく痙攣をしたが、麻酔の効果が得られたようだ。シーボルトは大きく頷いた。
「電気麻酔の方法があるとは、いやはや、思い出せなかったよ。
昔の電気麻酔は、いくつかの欠点があったがね、さ、始めよう」
リアルロイドがスクイックの骨髄を取り出した。
そして骨髄から皮膚の細胞を作り出し、みるみるうちに増殖させた。シーボルトは言った。
「一番重症な腕からだ。いくぞ」
手術は約4時間だった。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
術後の経過は順調で、
次々と皮膚を張り替えていった。すべての皮膚を張り替えたころには数ヵ月の後、内陸も雪がとけ始めた。
ログハウスの中で、スープが入ったマグカップが3つ、湯気を立てていた。
ゆっくりと啜るシーボルトの顔は、いつものような穏やかな顔ではなかった。
顔に包帯を巻かれたスクイックは、独り言のように呟いた。
「お金なんてないのに……物好きな医者だこと」
「そんなことはない、これは好意だ。さあ、包帯をはずしてみよう」
シーボルトはゆっくりと、最後の、顔の包帯をはずした。
そして、クロムは手鏡を渡した。
その時、ログハウス中のありとあらゆる物が振動した。
窓ガラスも揺れれば、マグカップも振動し、スクイックの体はそれ以上に揺れた。
「先生!なんですか、これは……本当にあたしの顔?!」
「ああ、顎の裏と鰓に少し傷跡が残るぐらいだ」
「ありがとう、シーボルト先生!クロム!」
「あ、うん、こちらこそ」
あつく握手を交わした後、シーボルトはソファに深く腰掛けた。
「これにて、手術はすべて終了と、もう歩けないわずらわしさから開放されるぞ」
「そうね、どうお礼しようかわからないわ」
スクイックの顔には、豊かな笑顔が実っていた。クロムは目を少しこすった。
「あぁ、なんだか眠たくなったよ」
「私も、目がかすむ……年とやらには、勝てないのか」
クロムとシーボルトは一緒になって目がうつろになる。
スクイックは一瞬肩眉を上げたが、次の瞬間には笑みに戻っていた。
「2階には2人分のベッドがあるわ、休んでいて。きっと疲れたのでしょう」
「かたじけないな、スクイック……」
老人はゆっくりと腰を上げ、若人を後ろにして2階の客間へ連れていった。
2人は2階に上がった地点で意識が消えていった。
少女は2階へ上がったことを確認して、暖炉の火をくべた。
その口元は歪み、不敵な笑みを浮かべて、煌々と燃える炎に目を細めていた。