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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 銀の炎 <鳥人間現る!> ( No.86 )
- 日時: 2010/11/14 19:19
- 名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: EUGuRcEV)
後編
何かを思い出したかのように、すたすたと廊下を歩いていった。
女性は動物研究室C-1のドアを開けて、名前を呼んだ。
「ラット!」
「は、はいアレクセイ嬢」
ラットと呼ばれるものはすぐに立ち上がり、女性についていった。
その女性はアレクセイ嬢と呼ばれているそうだが……。
2人は長い廊下の中、話し合っていた。
「ホシをつけた男はどうなっている」
「はい、今は診療所にいるかと」
「ふん……外国人は何をするか分からぬ、警戒するように……そうだ、ラット。肌が一段と綺麗よ」
「ありがとうございます、アレクセイ嬢」
アレクセイと呼ばれる女は、一つうなずき、ラットという人物を離した。
しばらく渡り廊下を歩き、エレヴェータを乗り継ぎ、エレヴェータを出たときは、
美術館のような一室が広がった。
オセジにも綺麗とはいえない芸術品に目もくれず、アレクセイは一番奥の小さな額縁の絵に触れると、
1枚のドアがスライドし、隠れ廊下が現れた。ハイヒールの靴の音が小さくこだまする。
30m先に、また1枚のドアがある。左脇には、パスワードを入力するための端末が設置されて、
キーはギリシア文字でなっている。彼女はその端末に、「Πρωτοχρονια」と入力し、最後に「’」を付け加えた。
するとドアが開き、ドアの向こうには、いかにも王女様部屋が漂う。
ベッドには豊かなクリーム色の天幕、5mはあるといえよう窓、その横にはレースのカーテン。
椅子はベルベッドの生地。アレクセイはバルコニーにつながる窓ドアを開け、
久しぶりに新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込みながら、
南の岩山を見て、切ないため息をついた。
まるで恋をしているかのように。
「ハノン……」
エメラルド色の瞳はゆらいだ。アレクセイの声は風に乗り、南の岩山に届くことを信じる……。
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