ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Real Flame... ( No.9 )
- 日時: 2010/09/10 18:34
- 名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: hAtlip/J)
第4話『不法侵入者』 後編
—ガシン
ん?なんだこの音は…さては耳鳴りか。クロムは首を少しかしげながら進んだ。
ガシン
これは—耳鳴りなのか?
金属のこすれる音が聞こえるが……クロムは不審に思い、走り出した。
早く町にいかねば—
マテ!
機械的な音がクロムの耳に響いた。クロムは立ち止まる。ゆっくりと、後ろを向く。
そこには大きなオオカミが呻って、5匹ぐらいの集団になって威嚇をしている。
周りは暗くてよく見えないが、オオカミは電気を発して、辺りを見るには十分な明りになった。
そのオオカミは頭にはヘルメットを被って、頭にはさながらユニコーンのように角が突き出ている。
オオカミは怒鳴るような声で言った。
「お前は不法侵入者だな。すぐさま出て行ってもらおう。
もし、お前が立ち向かうような真似をしたら、どうなるかね」
クロムは引き返さなかった。
矢を番え、オオカミの胴体に狙いを定める。
頭だと跳ね返される可能性があるからだ。
オオカミはにやりと笑う。
「ほう、よほど自信があるようだね、だがお前は野良犬と同じだ!」
こういい終えると、オオカミの肩にある装置がバチバチと音を立てる。
「俺たちゃ雷光のβ001+。通称ベータといってね、電気を自在に操れる。さあ来い、小僧!」
クロムは眉間にシワを寄せ、威嚇をしているオオカミ、ベータに弓を放った。
すかさずオオカミ達は角から電気を放電、矢をぎりぎりの所で止めてしまった。
そして、矢が電気に耐え切れず、折れてしまった。
クロムは少し舌打ちをすると、もう一度弓を構える。
今度は少し角度を上にあげ、弓を放った。
オオカミは鼻であしらうかのように、電気でシールドを作り、またも簡単に弓が折れてしまった。
オオカミは笑った。
「何度やっても同じだ、小僧。また弓を射るかね。それとも、このまま帰るかね」
クロムは少し考えた。そして今度は、自分の得意中の得意、剣を使っての攻撃に挑む。
クロムはオオカミ達をなぎ払う、最も防御の薄い足を狙うことにした。
そして腰辺りに右手で剣を構えて、オオカミ達の足に狙いを定めたが、
オオカミの足に触れた瞬間、腕が一瞬感覚をなくし、コンマ1秒の地点で、
燃えるような痛みがクロムの右腕を中心に襲った。
危うく剣を落としそうになったが、何とか持ちこたえ、2、3歩後ずさりした。
「こいつら、身体全身に電気を走らせているな…」
赤くなって腫れている腕をさすった。
痛みこそは感じないが、腕に力は入らず、ただ無気力に右腕が垂れていた。ベータ達は得意そうだ。
「貴様の剣が触れるちょっと前に、体中の電気を最大限にしたのだ。貴様の腕は使い物にはならん」
クロムは険しい顔をしたが、何かがひらめいたような顔をした。
「たしかに右腕は使えないな」
若者はふと空を見上げる。雲が垂れ込み、今にも雨が降り出しそうな天候だ。
相手は電力を操っている。このままいけば—!
クロムは左手に剣を持ち構え、ベータに斬りかかる。ベータはしびれを切らし、クロムに突進した。
そしてお互い衝突した。激しい稲光と耳を貫く音がそこらじゅうに響き渡った。
クロムは宙返りをし、またもとの位置に戻った。肝心の左手はピンピンしている。
そして、紐がクロムの腕に巻き付いている。
先ほどの衝突と同時に、オオカミに紐をくくりつけたのだ。
ベータはそれに気づくと、体中の電気をフルで放電した。
クロムは涼しい顔をして、ベータを見つめた。
「左手には特殊な素材のグローブをしているんで、たとえお前が噛み付いても平気なんだ」
ベータは放電が効かないと思ったが、またも余裕の笑みで少し笑った。
「ほほう、お前さんは左利きか。だが俺達には電気だけが武器ではない。
身体という最も身近な武器があるじゃないか。
お前さんは接近戦に持ち込もうとしているのかね、それが最後の笑みと思え」
クロムはまたにやりとした。そしていよいよ雲から稲光が見えた。