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Re: 銀の炎 <鳥人間現る!> ( No.90 )
日時: 2010/11/17 17:29
名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: EUGuRcEV)

第26話『曲者』 前編

「遺伝子組み換え人間?」

ナオが方眉を上げた。

「何だよ、それは」

衣文かけにコートをかけたあと、
アービンはパソコンを開き、
かくしからUSBコネクタを取り出し、USBにつなげた。

そして、画面には資料が開いた。アービンは言った。

「その名のとおり、遺伝子を組み替えた人間のことだ。
まず、遺伝子を組み替え、特殊なボールに封じ込める。
そして、人工授精をし、妊娠、生まれる。
その人間はさながらサイボーグのように、
ある特定の物質や、環境に異常なほどの耐久性を持つ。
だが、人がいじった人工遺伝子は、リスクがある。

人工授精はするが、子宮着床が難しくなったり、
途中で流産のリスクがある。
もし無事に生まれてきても、腕が無かったり、子を生めない体だったり、
畸形の子どもが生まれるそうだ。

そうではなくても、人間の尊厳を失うことから、生産は中止されたらしいぜ」

「その研究をした協会があるんだな?」

「ああ、驚いたことに、メガドルサ協会だ」

「メガドルサ?!あの医療大企業のことか」

「まあな……」

「で、その遺伝子組み換え人間が、この国にいるのか?」

「現在、推定で10人だ」

「畸形の赤ん坊は生まれたというのは?」

「定かではないが、魚麟癬の子どもがいる」

「ふん……」
ナオは一回椅子に深く腰をかけた。そして大きく息を吸った。

「もしかしたら、あの詩と深く関連しているかもしれない」

アービンは、USBをアービンの机の中にいれ、机の鍵を閉めた。そして、暖房のスイッチを入れた。

「バカに冷えてきたぞ」

「さっきまではそんなに寒くは無かった」

ナオも腕をこすり、肩をくすめる。窓ガラスがガタガタと音を立て、
外は厚い雲に覆われ始めた。ナオは雲行きを見て、深くため息をつく。

「今夜は大荒れかもしれない」

「俺は寒いのが苦手なんだ」

さらにアービンは暖房のスイッチを上げる。そして温風口に手をかざす。

「こうしていると、冬も悪くはないぜ」

「あぁ、私は外で雪だるまを良く作っていたんだ」

「スノーマンか?」

「そうだ、日本も雪は降る。それも白銀だ。雪合戦、つらら探し、
スキーやスノボ、そりだって。私は冬は嫌いじゃないんだね」

「調子いいぜ」

いよいよ雪が降り始めた。日本だと春だと言うのに、北風が吹くのは、この国の特徴だ。

ナオとアービンは楽しく会話を弾ませている。
アービンはほとんど表情を変えないが、ナオと一緒にいると、
いくらかその能面が柔らかくなっているような気がする。