ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Hated .オリキャラ募集中 ( No.13 )
日時: 2010/09/14 22:04
名前:   葵 ◆iYEpEVPG4g (ID: NRAsdfzb)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode

        
         
       
玄関の戸を勢い良く開く。少し肌寒い風が、すっと身体の周りを通り抜けていった。心を落ち着かせようと息を整える。息切れした喉が、じんわりと痛んだ。
ローファーを踏み込んで、いつもの通学路をがむしゃらに走る。騒々しい音が、その後を付いて来た。
              


            
         
流れていく風景に横目も振らず走っていって、息が苦しくなってきた頃、携帯の着信音が僅かに鳴った。
         
   
どきりと心臓の鼓動が鳴る。ああ、また゛何か゛が起こるのだろうか。゛何か゛?それは、私にとって悪い意味でしかない。過剰過ぎだろうか、だけれど、不安である事に変わりは無い。
 
走りながら、鞄の横のポケットから携帯を取り出す。誰からの電話なんて見やしなかった。咄嗟にそれを開いて、ただ「もしもし?」なんていう、言葉を喋った。
         
         
「流花?」
「そうだけど。実玲だよね?」
            
「うん。それで、さぁ。」
「朝のメール、見た?」
「朝の・・・って、あのHatredの?」
「違うよぉ、あたしが送ったやつ。」
       
話が噛合わない。実玲からのメール?そんなの、着ていたっけ?
      
「・・・あ。」
「どした?」
「もしかして、朝の?」
「だからそうだって言ってるじゃん!もしかして見てないの?」
「・・・うん、ごめん見てない。」
          
「そっか、じゃ、まぁいいや。今話す。」
         
僅かな間、沈黙が流れた。
メールの内容って、何、だったんだろう。小さな疑問は、深いため息に押しつぶされた。
電話するほど重要な事だったんだろうか、・・・だとしたら、まぁ、なんというか申し訳ない。
          
「えっと、梓の事なんだけど・・・。梓今、病院じゃん?まだ意識不明みたいなんだ。その事ともう一つ。
Hatredのメール、来た?」
「え、あ・・・来たよ。でもさ、悪戯とかじゃないの?」
      
Hatredの、メール。
やっぱりだ。実玲にも来ていた。
少しの安堵の後に、悪寒が押し寄せてきた。Hatredのメール。誰からなんて分かりやしない。
             
「あたしも初めは流花とおんなじように、誰かの悪戯だって思ったよ。けど、あれをやったメンバーの中に、そんな事して遊ぶ人間は居ないと思う。
それに・・・殆どの子は話を聞いていなかったと思うし、騒がしかったから教室内の人数も多いように見えてたけど、実際は半分くらいは教室に居なかった。」
      
「このメールは、クラス内の人間からじゃないって事?」
 
「そうとは言い切れない。って言うか、どちらかと言うとそっちの方の可能性が高いと思う。けどそう思うんだ。」
    
「それのね、指令確認日ってやつなんだけど。9月13日の8時45分と、9月20日の11日の2つ・・・に、なってるよね。」
      
「其処までよく見てないからちょっと、分かんないや。」
  
「流花。鞄に梓の本入ってる?どさくさに紛れて荷物整理した時に入れたかもしんないんだけど見てみて。」
 
     
鞄を開く。がさがさと中を漁ると、あの時の本が教科書に埋もれて在った。
その本を抜き取ると、実玲に返事をした。
   
「その本の中、見て。」
 
言われる通りにページをめくる。目に留まったのは、やはり昨日見たページだった。
      
「何か書いてある。読むね。」
「うん。」
     
「指令1、Hated登録グループ451番の主催、山園梓は、明日の8時45分までに契約の証として自らの小指の爪を本に差し出す事。出来なかった場合は処置を行わせて貰います・・・。何、これ。」
       
「やっぱり!思った通りだ。2つあったのはどちらかが個人への命令だったから。あたしも朝に気付いたんだけど・・・。流花、今何時?」
  
「8時・・・25分。梓はどうなるの?」
「もしかしたら、もしかしたら、だよ。何か、危ない事とか、起こるかもしんない。命令自体が爪を差し出せなんて言う物だから、どうなるか・・・。」
    
どうして早く言ってくれなかったの?そう言いたい気持ちになった。だけど実玲を責めるのは筋違いだし、今はただ、このメールが誰かの悪戯で、梓が大変な事になる、なんて、絶対思いたくなかった。
Hatred、Hatred、Hatred。
何度もその言葉を頭で繰り返す。何が起こっているのか、理解出来ない。理解したくない。
    
「実玲。梓に、電話した?」
「したけど、繋がらないよ。今、さっきも。」
「病院知ってる?」
「行くつもり?」
「うん。」
     
「高坂病院ってトコ。あたしも、行くから。コンビニ前の信号で待ってて。」
     

                 
        
—高坂病院、その言葉が、頭の中で響いた。