ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Hated .オリキャラ募集中 ( No.16 )
日時: 2010/10/05 21:56
名前:   葵 ◆iYEpEVPG4g (ID: NRAsdfzb)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode

      
     
    
     
       
       
  
゛失いたくないものは、全てだった。結局私は、何かを切り捨てることなんて、出来なかった。
それが結論だった。
何一つ守る事なんて、出来やしなかったけれど。゛
    
         
     
-----石上美咲の日記より-----
       
     
        
        
      
 
妙な浮遊感に包まれて目を開けると、其処は色と言う認識が出来なかった。灰色のようで、透明のようで、全ての色であるようで。ただただ、そんな世界に私は在るだけだった。
 
頭上から、小さな声が聞こえる。私の名前を呼んでいた。誰の声だろう?流花?実玲?
目を開けてるのか、閉じているのか、座っているのか、立っているのか、浮いているのか、其処に意識はあるのか、眠っているのか、全てが分からない。
 
混沌とした感情の中で、意識だけが、やわらかな音を立てて沈んで行く。海の漣が、一時だけ、静寂に落ちるような。
      
 
  
—・・・・そんな事、もう、どうでもいいのかもしれない。
そう思った瞬間から、瞼が重くなっていった。
ふ、と急に視界から陽が消えた。意識は完全に起こされ、体の感覚がする。私は確かに生きていると、鼓動が伝えた。
ぬるい温度の水に体を投げ込まれた。浮遊感から離される変わりに呼吸が辛くなった。
 
必死でもがく、けれど沈んでゆく体。声は、水泡になって海の底に消えた。
苦しくなって息を吐き出す。不安と苦痛は私をただ押しつぶした。
    
      
声が聞こえた。可笑しな声が。
Hatredを、続けろ。
たったの11文字。その言葉が重く響いた。
そしてようやく気がついた。
Hatredとは何だったのか。皆を巻き込むべきではなかった事が、全ての事を、理解した。
思い出すのはあの日見た日記の言葉、本に記された言葉。あれは゛続けてはいけない゛
私はどうして?どうしてあれをやろうと言い出したのだろう。単純に興味が在ったから?、違う、もっと別の何かの力が働いていたんだ。
   
    
     
    
目を凝らすと、流花と実玲の姿が映った。声は聞こえなかった。手を伸ばす、助けて、と。
動かない。Hatredの事も、言わなければならない。
   
なんで、なんで、なんで、
動いてよ。どうして伝えられないの?
 
枯れた声を必死にかき集めた。
    
      
         
     
「・・・Hatred・・・い、し・・うえ、みさ、き。」
 
言いたい事はたくさんあった。けれど、搾り出せたのはこれだけだった。
目の前も暗くなって、意識も遠くなって、消えそうな自分の耳に最後に響いたのは、ナースコールを知らせる高い音だった。