ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Hated .オリキャラ募集中 ( No.19 )
- 日時: 2010/11/02 19:57
- 名前: 葵 ◆iYEpEVPG4g (ID: NRAsdfzb)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
ぽつり、ぽつり。
雨が、降り出していた。さっきまでの太陽がまるで存在していなかった嘘の様に。
次第に勢いを増した雫は、束となって雨となって、全ての上に降り注いだ。
それはとても冷たい冷たいような気がして。
朝方の冷たい空気が肌を撫でる。心なしか、自分の不安も煽られて行く。視界を下げると履いている灰色のスリッパが目に映る。雨と同じ色のそれを、瞳の奥で見つめた。
梓から分かった事。疑問ばかりが膨らむ。
どうして梓は倒れたの?どうしてそんな言葉を残したの?今、そんな事を考えている場合なの?
私達が訪れたあの時、どうして梓が・・・。
何も変わっていなかった。昨日から。疑心暗鬼が少しずつ私の心を蝕んで行く。
一人で座る病院の廊下の椅子。時折通る、静かな足音。
不意に気配が近づいた。顔を上げると、実怜が少し濡れた様子で立っていた。その表情も、また暗かった。きっと私も、それは酷い表情をいているのだろうけれど。
「流花。学校と親に、連絡しといたから。」
「・・・ありがと。」
「ごめん。私も今回は、笑って誰かの悪戯だったなんて、言えないよ。」
そう言って、顔をしかめた。
「そっか。」
なるべく明るい声で言ったつもりだった。だけど顔は視線を逸らしたままだった。
沈黙が流れる。
そのあと、実玲が肩を軽く叩いて隣に座った。
「時間だよ。梓が運ばれていった時間。」
「・・・時間?」
「8時45分なの。本当に。」
「嘘!、じゃあ、昨日のは。」
「うん・・・そうなんだ。もう、本当。どうしたらいいのか分かんない。」
—それから、長い時間が経ったあと。
昼には学校に持って行く筈だったお弁当を食べた。時計の針が何回も回転しても、その椅子を離れなかった。
もう帰りなさいと言われて、その場に居たナースの人に梓を聞いた。
—山崎、梓さん?ああ、今朝運ばれて行った。
詳しいことは分からないけど、その、亡くならしゃった・・・、みたいよ。お友達の方?
其処に在った現実は絶望だった。そして悲劇の、幕開けでもあった。
どうして私は、大切な人を失ってしまったんだろう。本当は心当たりがあった。けれど、目を背けたかった。
もし私が赤の他人なら、偶然だと思うだろう。そしてそんな事があってたまるかと嗤うだろう。
しかし私もHatedに入会している—そう、梓の死は、いずれ自分に降りかかるであろう災難を暗示していた。恐怖だけが、残った。