ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Hated ( No.4 )
- 日時: 2010/08/22 22:32
- 名前: 葵 (ID: NRAsdfzb)
第2話
゛夢物語と現実゛
足が痛い。呼吸が、速くなる。
全身を打つ冷たい雨が、体温を奪っていく。
肩にぱっくりと開いた痛々しい傷痕は、今もズキズキと痛んで血を流している。所々破けた血まみれの制服は、雨で色が薄くなっていた。
何でこんな事になってるの。私、何で此処に居るの。
何で、何で、何で。
必死に思考を巡らせる。その間にも、足を一瞬たりとも止めてはいけない。
止めてはいけない。そう、止めたらお仕舞いだ。
「ったくいい加減に・・・。」
それにしてもしつこい。絶対、追い着こうと思えば追い着けるのに。
私のペースはもう随分落ちている。それなのに、一定の距離を保って、たまに危なっかしい鋭利なナイフやら刃物を投げてくる。
当たったら一発で私の人生即終了だろうな。そんなもん刺さったら痛さでもう動けないのは確定だ。
奇跡的にも当たったのは肩だけ。ナイフが擦っただけとはいえすんっごく痛い。まぁ刺さるよりは幾分かマシな方か。
映画のシーンで刺さったのを思いっきり抜いたら血が滅茶苦茶出てきて出血多量で死亡なんてのがあったような気がする。ああゆうイメージで刺さるより擦れるの方がダメージ少ないみたいな。
とにかくどこぞの物騒な野郎に滅多打ちにされて死ぬなんてのはごめんだ。
冷静に考えて、そう、思い出せ。
消え去る風景に目を移す。さっきはまだ太陽も出て明るかった筈・・・なのに、今は夜だ。それに雨も降ってる。
私が制服を着ているのは、今日は学校があったからで—
それで、それで、それで。
皆が居て他愛も無い事喋って、休憩時間に。あれ、何やってたんだろう。思い出せない。
気づいた時には、もうそいつは居た。
急ぐように足を速める。街灯に照らされた後ろの影はずっと同じ大きさだ。
家まで距離は少ない。そう急がずともすぐ着く。だけどこの時ばかりは長く感じた。我慢出来なくて走り出した。それが間違いだったのかもしれない。
気付くと街灯なんてこれっぽっちも見つからない暗闇に出た。私があまり目を向けないだけで、本当は建物や町が転がっていたのかもしれないけど。
逃げていた。必死で逃げた。
雨なんていつ降っていたのか。冷たいとこの体が感じるようになったのはいつだったか。
それをも思い出せないほどに長く走っていたのか。止まる事のない足音が、嫌と言うほど自分の耳に響く。
息はとうに荒くなっている。この体力がいつまで持つだろうか。
目の前の視界がぐらついて歪んだ。
もう、終わりしかない。
揺れる暗闇の中で、止まったような空間の中で。
鋭利なナイフはもう私を貫いている。
—・・・い・・・が・・・ごめ・・・。
何を言ってるの。聞こえない。聞き取れない。
あー、って言うか私大丈夫なんかな。血おもくそ出てるんだけど。なんか、でももう痛くないし大丈夫かな。
—憎いだろう?
・・・・みは、それを・・・・・か。
何を。
私何にも憎くはないし恨まれるような事してないんだけど。取りあえず助けてください。
—だから、受け入れなくてはならない
はぁ?
訳が分からない。此処から出してよ。
—だから、もう・・・・で・・・・だ。
真実を知る、のは、まだ早い
言葉が上手く聞き取れなかったのは、薄れてゆく私の意識のせいか、それとも得体の知れない相手が途切れ途切れに話していたのか。
重要な事は聞こえないようにしてたのかもしれない。
相手じゃなくて、私が。
知らなくても良い事なんだって、その時ばかりは、思ってたんだ。
ぷつん、丁度そんな感じの音が私の中で鳴って、薄い意識は、暗い闇の中へ消えていった。