ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第1話「黒の少年」 ( No.10 )
日時: 2010/09/07 19:11
名前: 神村 ◆qtpXpI6DgM (ID: 3mln2Ui1)

続き。遅くなって申し訳な(黙   ではどうぞ。











 私とルーが出会ったのは、もうかれこれ十年も昔の事になる。今でもあの日のことは鮮明に覚えている。あの日の私は近所の森の奥にある私だけが知っている秘密の花畑で黒い少年にあったのだ。黒いといってもそれはイメージの話で服装や髪が黒って以外普通の子供だったと思う。いや……普通ではなかったな。

 第一印象は『黒』。ただそれだけだった。どこまでも深い黒。三歳の子供に抱くイメージとしては相応しくないと我ながら思うけど、本当にそう思ったのだから仕方ない。思い出して私は苦笑する。あの頃のルーは本当に子供っぽくなかったな。微妙に怖かったし。






 ——回想。十年前、セティの秘密の花畑

「ねぇ、なにしてるの?」

 綺麗な花畑にぽつんとある黒に興味を持った幼い私は近づいて声をかけた。そこに座って空を眺めていたのは黒髪に黒のローブを着た私よりも幼くって小さいされども冷たい目をした少年だった。

 黒髪の少年は私の問いには答えず、ただ空を眺めていた。まるで私の声なんて聞こえてないようだった。無視しているのかもしれない。

 その様子に私は少し腹が立って、

「ねえってば!」

 と言って黒髪の少年の肩を掴み無理矢理こちらを向かせた。その瞬間、私は驚いて目を見開いた。少年の瞳が綺麗な紫色をしていたからだ。それはまるで宝石のように綺麗で、私はこんな綺麗な瞳をした人を見たことがなかった。

「きれい……」

「は?」

 私は思わず呟いた。対する黒髪の少年は怪訝な顔した。顔に何言ってるの、こいつって書いてあるかのようだ。だから私は胸を張って言ってやった。

「だから、きれいだっていってるの!その目!だって、たからものみたいじゃない?」

 キラキラしててまるで宝物みたいと六歳の私は思った。

「はぁ?何言ってるの?この目が綺麗?」

 私は本当にそう思って言ってるのに、少年にはそれ
が信じられないらしく私を馬鹿にしたように笑った。皮肉げに顔を歪め笑う少年はなんだか悲しげに私には見えたものだった。

「戯言を。この瞳は闇。闇でしかないんだよ。闇を本当に綺麗だと思う人はいない。いたとしてもそれは同じ闇に染まった者だけ。君のような光の者がそう思うものじゃない」

 黒髪の少年の淡々と語るその内容は六歳の私にはまだ理解できなかった。だから、思ったことを言うことにしたんだ。

「そんなむずかしいこといわれたってわからないよ。でも、やみっていうのはちがうとおもうわ!だってわたし、きれいだっておもったんだもん。それでいいじゃない」

 ね?と私が首を傾けると黒髪の少年は驚いたように目を見開いた。

 黒髪の少年は急に俯き、

「なんだよ、それ。僕が悩んでいたのが馬鹿みたいじゃないか」

 と泣きそうな声で呟いた。そして私のことを見上げ、眩しそうに目を細めた。

「でも、まあ。それもいいのかもしれないね。僕の名前はルディアス。そう言えば、君の名前は?」

 黒髪の少年は少しはにかんだ笑みを浮かべ私に問いかけてきた。

 もちろん、私はそれに満面の笑みで答えた。

「わたしはセティ。よろしくね!るでぃ……。ごめん、いいづらいんだけど」

 初対面でいきなり噛んだ私に黒髪の少年は可笑しそうに笑った。

「ふふ。好きに呼んでいいよ」

「じゃぁ、『ルー』ってよぶわ!」

「いいよ」

 涼しい顔して頷いたルーに私はいきなり体当たりをかました。

「ッ!」

 当然、私よりも小さいルーは私の体重なんか支えられるはずもなく私と一緒に倒れた。

「ちょっ……。何するの!?」

「ふふっ」

 うろたえるルーの様子に私は急に嬉しくなって笑った。











 あれから、色々とあって私は忘れていたんだ。

 ルーが私とは赤の他人だという事を。

 彼には背負っている何かがあるということを。

 それを思い出したのはこの時からしばらく経ってからだった。