ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 『lost world 荒廃した世界』 ( No.22 )
- 日時: 2010/08/26 18:37
- 名前: 遊太 (ID: U3CBWc3a)
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朝日も完全に上り、三吉光率いる小隊はレインボーブリッジを目指しながら足を進めていた。
車道に散らばるガラスの破片を踏む度に、閑散とした東京の街に音が響き渡る。
「ホープ軍曹よ、レインボーブリッジは大丈夫なのか?俺は用田みたいなくたばり方したくねえぜ。」
「ブラック、用田の死を馬鹿にするのは止めろ。山本大佐の情報で、向こうは敵の鎮圧もされている。」
コードネームで呼び合う光と苑柿の間には、未だとして変な空気が漂っている。
今朝息を引き取った用田の死が、2人の関係を悪くしている。
そんな中、間に入り込んできたのはアギトこと、椎島アギトだった。
「ブラック、作戦中に止めて下さい。失敗したらどうするんです?」
「はいはい・・・アギト兵長さんには敵わんよ・・・」
ブラックは笑いながらそっぽを向いた。
誰の言うことも効かない苑柿は、なぜか椎島の言うことは聞く。
これは誰にも分からないことだった。
「ホープ軍曹、見えたよ。」
ハヤブサの言葉で、全員は前を向く。
すると、そこには現代では信じられない光景が広がっていた。
レインボーブリッジの中央には大きく穴があき、通行不能となった不思議な光景。
更に、橋を継続する無数のワイヤーは、力尽きたようにダラリと海へ伸びている。
4人はこの光景を見ると、思わず言葉を失くし呆然とする。
「いつ見ても見とれるな。前の姿が思い出せねえよ。」
苑柿は笑いながら言うと、誰よりも先に前へと進みだした。
他の3人も我に戻り、足を再び進め始める。
その直後だった。
「待て!!全員止まれ!!!!」
先頭を進んでいた苑柿が大声を出して3人を止める。
光は首を傾げ、急いで苑柿の元へ走る。
「どうした?」
「あ、あれ見てくれよ・・・・」
「なっ!?」
光は東京湾を見て、完全に頭が真っ白となり、言葉も出ず、表情は唖然とする。
後ろからきた椎島とハヤブサも東京湾を見ると、愕然とした表情で、持っていたマシンガンを落とした。
「インヴィンシブル級航空母艦、3艇もあるぜ。」
東京湾のど真ん中に、映画で見るような軍艦が3艇も停泊している。
甲板に設置された滑走路には、10機ものの戦闘機、3艇合わせて30機以上ある。
こんなもので今攻め込まれれば、日本は完全に終わってしまう。
「おいおい・・・どうする・・・・・」
「どうするって・・・・あんなものに太刀打ちできるわけないだろう。一旦引き返すぞ。」
「はぁ!?ここまで来たんだ。どうせならやろうぜ。」
「ふざけるな!!!あの3艇にどれだけアメリカ軍の兵士が乗っていると思ってる!?」
光の言葉に、冷静を戻した苑柿は舌打ちをして再び軍艦を見る。
こちらの数は20数人、それに対して軍艦3艇に戦闘機30機以上、更にはアメリカ兵。
勝てる見込みは微塵もない。ここは引き返すのが当たり前だ。
「あれ?ちょっと待って下さいよ。確か川本大尉の部隊がいるんじゃないですか?」
椎島の言葉で、光はすっかり忘れていたことを思い出す。
確か、ここの近くに川本大尉が率いる部隊がいるはずだ。
「ならその部隊探そうぜ、ホープ軍曹。」
「そうだな。ハヤブサ、山本大佐に連絡を取ってこのことを全て説明しておいてくれ。」
「了解。」
光はマシンガンを持ちなおすと、苑柿、椎島、ハヤブサと共に川本大尉の部隊を探し始めた。
しかしこの時、光は気付いていなかった。
最大の間違いに_______
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インヴィンシブル級航空母艦 第1軍艦
ドレガーとマリーは、湾岸から軍艦までボートで移動し、第1軍艦に乗り込んでいた。
2人が軍艦に乗り込むと、敬礼をした隊員たちが廊下に並んでいた。
「意外と来るの早かったな、スコット・ローデリック少将。」
2人の前に現れたスキンヘッドで瞳の色が赤のスコット・ローデリック。
スコットは微笑すると、いきなりドレガーの髪を掴んで口元にドレガーの耳を近づけた。
「ドレガー准将、あなたには厳しい処罰が下る。勝手な単独行動が裏目に出たな。」
スコットはそのままドレガーを床に叩きつけると、大笑いしながら廊下を歩いて行った。
マリーはドレガーに駆け寄り、優しく声をかける。
「准将、大丈夫ですか?」
「・・・・あの野郎、絶対に殺してやる。」
ドレガーはスコットの後ろ姿を睨みつけながら立ちあがり、つぶやく。
マリーはこの時、ドレガーの怒りを感じて思わず震えてしまう。
「いくぞ、疲れたし休もう。」
ドレガーはそう言うと、マリーと共に用意された客室へと入っていった。