ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 『lost world 正義の壊乱』 ( No.36 )
日時: 2010/08/30 16:46
名前: 遊太 (ID: U3CBWc3a)

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軍艦最下層 燃料コントロールルーム


黒い煙で充満した最下層に、ハヤブサと光は入った。
そう、とうとう内部に侵入したのだ。

「げっほ・・・・ここ臭いな・・・・・」

「こんな軍艦を動かすのに燃料が大量にいるんだ。こうなるのも無理はない。」

光とハヤブサは、なるべく低い体勢で足を進める。
視界が悪く、これでは拉致があきそうにない。

「ハヤブサ、出入り口見えたか?」

「見えるわけないだろ・・・・あっ、GPSに地図でもあるんじゃないの?」

「あっ・・・そうだな。」

2人は先ほどアメリカ兵から奪った服の中に入っていた迷彩柄のGPSを取り出す。
電源を入れると、ハヤブサの言った通り軍艦の内部地図が搭載されていた。

「ここがこうなって・・・・よし!!軍艦のコントロールルームは7階だ。行こう!!!」

光はそう言うと、先頭に立ってGPSを見ながら足を進めた。


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東京 渋谷区


小宮山の死体を見つけた苑柿は、未だに呆然としていた。
なぜ、小宮山中佐がこんな場所で殺されているのか?
車で逃げようとして殺された?

「武器は持ってない・・・・奪われた・・・のか?」

苑柿は死んだ小宮山の腰を見ながら言った。
武器が一つもない。
それに、どうすればこんな殺し方ができるのだろう。

「腸が・・・・グロすぎる・・・・・」

小宮山の腹から出ている腸は、未だにピクリと動いている。
苑柿は振り向き、椎島を見る。

「おい!!ほかの3人を探そうぜ。」

「そうですね・・・・でも・・・・・・・」

椎島は持っていたGPSをポケットに直し、マシンガンを持ちなおす。
苑柿もマシンガンを持ちなおすと、小宮山の死体を見ながら椎島の元へ駆け寄る。
その直後に、全てが起こった。






バン_______





「・・・・・・え?」






一瞬、苑柿は何が起こったのか分からなかった。
苑柿が自身の腹を見ると、大量の血が溢れだしていた。

「なんだ・・・・・こ・・・・・れ・・・・・・」

苑柿は大量出血による目まいで、ガラスの破片や瓦礫が散乱する車道に倒れ込んだ。


「大きな声と大胆な行動は、兵隊として駄目な部分ですよ。」


倒れ込んだ苑柿の横に、何者かがいる。
しかし、苑柿は目まいのせいで視界が悪くなり、顔が見えない。

「見えなくとも・・・・あんたのこと分かるぜ・・・・椎島兵長・・・・・・」

「もうしょうがないですね。率直に言います、私はスパイだ。」

「なぜ・・・裏切った・・・・・・・」


「あなた方は、なんで戦うのですか?」


「な・・・・に・・・・・?」


椎島の質問に、苑柿は思わず言葉を失った。
と同時に、苑柿は自身の腹部に激痛が走るのが分かった。
それを見た椎島は、ため息をついて話を始める。

「僕には、君たちみたいに家族、彼女、友達がいません。戦う理由、平和のため?それは単なる戯言だ。僕はそこで考えた。どうせなら、日本を壊す。」

「何の・・ために・・・・・」


「自分の欲求だよ!!!!快楽!!!!僕の唯一の家族を奪った日本への復讐だ!!!!」


「日本に・・・・奪われた?」

「そうさ、開戦したあの日。家族は誤って日本の兵隊に殺された!!!!僕は、それが許せない。」

椎島はマシンガンを腰に直すと、しゃがみ込んで苑柿の顔を見下ろす。
苑柿は最後の力を振り絞り、椎島の顔を見る。
2人の目があった瞬間、椎島は不気味に微笑んだ。

「僕がこの戦いを終わらす。アメリカ合衆国の勝利でね。さようなら、苑柿上等兵。」

「くたばれ・・・・裏切り者が・・・・・」

「僕はこれからアメリカに発つ。どうせなら、三吉君とハヤブサも殺そう。」

「てめぇ!!!・・・・・あっ・・・・・」

苑柿は思わず立ち上がろうとしたが、それが裏目にでてしまった。
とうとう、体が動かなくなってきたのだ。
地面を通じて、椎島の足音が遠くなっていくのが分かる。

「待て・・・・・このや・・・・ろう・・・」

苑柿はその言葉を最後に、静かに目を閉じた。
そして、椎島は苑柿の方を振り返らずに、そのまま歩き去って行った。



Episode1 終了_______




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