ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 『lost world 荒廃した世界』 ( No.7 )
日時: 2010/08/25 14:33
名前: 遊太 (ID: U3CBWc3a)

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「敵国侵入成功、ドレガー准将。」

ガスマスクにガトリングを背中に抱え、両手にマシンガンを持った5人組が海面から現れる。
5人組は、東京湾に面した廃化した港付近に上がると、周りを警戒しながら足を進める。
先頭を歩いていた人物はガスマスクを外すと、髪を掻き分けて上を見上げた。

「まったく、戦争の中でこんな青い空を見れるのは久方ぶりだな。」

ドレガー・エルフィードは微笑しながらそう言う。
すると、後ろにいた4人は首を傾げながらドレガーに近づいてきた。

「准将、これからどうなさいますか?」

「後に応援部隊も来る。その間、腐った日本の兵隊を速やかに抹殺して行く。」

ドレガーはガスマスクをかぶると、マシンガンを両手に構えて進み始めた。
彼らの目的地は、ここから1キロ弱のところにある渋谷区である。
理由は一つ、衛星写真が人影を捕えたからである。
ドレガー准将率いる小部隊は、そのまま渋谷区へと進んで行った。

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東京都 渋谷区 高級マンション跡地


次なるポイント、キャンプに着いたホープとハヤブサは、重い肩の荷を下ろした。
2人が潰れたマンション内に足を踏み入れると、エントランスの真ん中にはたき火が焚かれてある。
たき火を囲むようにして、同じ服装をした隊員たちが談笑をしている。

「三吉軍曹、パトロール御苦労。」

「山本大佐もお疲れ様です。異常や変化はありません。」

「ハヤブサ伍長も御苦労だった。2人とも、とりあえず夕食でも食べるといい。」

2人の上官である山本源次郎大佐は、2人に優しく声をかけるとその場から歩き去って行った。
山本はここ一帯の自衛隊を指揮する指揮官である。
厚い人望とフレンドリーな性格で、どの部隊からも信頼されている上官だ。

「ハヤブサ、シチューでも食べようぜ。」

「俺はカレーにする。光、向こうで食べよう。」

ここで疑問が思い浮かぶだろう。
ハヤブサだけは、延々とコードネームで呼ばれている。
その理由は、彼が記憶喪失だからである。彼は入隊以前、戦争開戦時に記憶を失ったのだ。
記憶を失った原因は誰にも分からない。
2人は皿を手に、人気が少ない1階の奥の部屋に入る。
荒れ果てた5LDKの部屋は、床に新聞紙や食器類の残骸。壁には銃痕が残っている。

「さてと、ようやく飯だ!!」

ハヤブサはスプーンをカレーに運び、おいしそうに食べて行く。
2人は周りの荒れ果てた光景を気にせず、飯を口に運んでいく。

「明日は新宿へ移動だろ?まったく、一体どこまで進む気なんだよ・・・・」

「とりあえず東京を抜けるそうだ。そのあとも、関東から抜けるためにずっと進む。」

「俺らの部隊だけかな?東京にいるの?」

「分からない。米国がジャミングしているせいで、あまり遠くまでトランシーバーが繋がらないんだ。」

光は食べ終えると、皿を持って足早に部屋を出て行った。
ハヤブサも慌てて食べ終え、光の後を追う。

「飯ぐらいゆっくり食べようぜ。」

「これから会議なんだ。ゆっくり休めよ。」

「会議・・・明日のか。頑張れよ。」

ハヤブサはそう言うと、一人エントランスの方へと向かって言った。
光は自身の荷物が置かれてある部屋に行くと、手帳とペンをポケットに直す。
着ていた防弾チョッキを脱ぐと、会議がある部屋へと向かった。