ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: タンテイブ ( No.10 )
日時: 2010/08/26 17:42
名前: ガイ (ID: HQL6T6.Y)

第7話

 犯人候補の顔がはっとなる。この中に犯人がいるのだから当たり前だろう。犯人はあいつだからな。

「手掛かりがなくて苦労しましたが百瀬さんのあの言葉で分かりました」
「あの言葉って?」

 ひ弱そうな田中が言う。

「『道の左側か右側どちらを歩いていたか』という問いに『左側』と答えました」
「それとこれとはどういうつながりがあんの?」

 大学生の金田が言う。
 まだ気づかないのか。

「では逆に聞きますが、貴方達の車の運転席は右か左どちらですか?」
「全員日本車だから、右側だな……あっ!」

 ゴリラ顔の権堂がはっとした顔になった。
 やっと気づいてくれたか。
 そう、そうなのだ。

「道路の左側を歩いていた百瀬さんの鞄を盗るなんて、車の右側にある運転席に乗ってる人は手が届かないですよね。だから車に1人で乗っていた田中さんと権堂さんは犯行をすることは不可能なんです。しかし二人で車に乗っていた金田さんと小西さんなら、どちらかが運転してどちらかがひったくる、という方法でやれば犯行は不可能ではない」

 金田と小西の顔が強張る。
 そして勢いに乗り俺は続けた。

「もう分かりますね。百瀬の鞄をひったくった犯人は金田さんと小西さん、あなた達だ!」
 
 決まった———。
 しかし自分の顔が真っ赤なのに気づいた。
 綾人が笑っている。
 恥ずかしー。