ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 嘘吐少年の狂日 返信100突破そして参照も500突破! ( No.108 )
- 日時: 2010/10/30 18:04
- 名前: 時雨 (ID: bQbYMR0G)
ぐわっと。
一瞬、感覚がなくなった。
堕ちるような浮いているような。
視界が歪む。
———。
「——う…っ」
いつのまにか部屋の中にいた。
さっきまで歪んでいた景色が消える。
それと同時に軽い吐き気。
もどしはしなかったものの口の中が酸ですっぱい。
僕の横には夜鐘。
平気だったのか普通に立っている。
「おい、大丈夫かよ」
「平気…だと思う」
夜鐘が差し出した手をとって立つ。
「なんか、変な感じだ」
「それは当たり前。…あなたたちは初めて結界に触れたのだから」
後ろから声が聞こえた。
振り向いた目の先には餡子ちゃんがいた。
「…気分はどう?」
「大丈夫だよ」
そう、と横を向く。
僕は餡子ちゃんの気遣いに感謝しながら部屋を見回した。
なんというか素朴でウッドハウスの中みたいな。
近くに二階へ上がる階段と地下へ降りる階段がある。
この部屋の真ん中にはテーブルが横にソファが一つずつ。
テーブルクロスと床に敷いてあるカーペットが同じ模様だ。
部屋の隅にはキッチンがあり、お茶とかカップとかが置いてある。
「ようこそ、魔罪屋へ」
と誰かが二階から降りてきた。
「店主は二階でお待ちです」
降りてきたのは十五歳になるかならないかの少年だった。
黒いロングコートに黒いズボン。
漆黒の肩より少し短い髪がややはねている。
黒尽くめでいうと澪ちゃんといいい勝負だ。
ただ、目は紅いのでよく目立つ。
「おっ」
夜鐘はその少年を知っているのか、友好的な声を放つ。
少年も夜鐘に会釈して餡子ちゃんの方を向く。
「道案内お疲れ様です。どうぞ二階で待機してください」
「…そうする」
餡子ちゃんは音を立てずに階段を上がった。
少年は僕の方を向いた。
「初めまして、紀ノ原葛雲です。よろしくお願いします」
「あ、どうも。僕は——」
「——知ってますよ。“嘘憑き”さんですね。恐怖の透明から訊いてます」
「吐きが間違ってない?」
「え?あってますよ。あと、夜鐘先輩、久しぶりです」
「おう、元気やってるか?」
「はい、おかげさまで」
葛雲君と夜鐘はやはり知り合いらしい。
いや、話し方からして知り合い以上——師弟とかそんな感じがする。
訊いてみよう。
「なぁ、やか——」
「——では、僕についてきてください」
「……」
遮られた。
計算じゃなく偶然だと葛雲君の反応から分かる。
アイコンタクトみたいなので大丈夫と伝えると葛雲君はホッとしたような顔になり足を進めた。