ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 嘘吐少年の狂日 ( No.112 )
- 日時: 2010/11/05 18:50
- 名前: 時雨 (ID: bQbYMR0G)
開いた。
が、人が開いたんじゃなく勝手に開いた。
「「…………」」
仕掛けがしてあるのか?
さすがに何もなしでお化け屋敷みたいな開き方はしないだろう。
扉の向こうは一階と似たような部屋だった。
ただ、キッチン以外にも寝室やら個室やらいろいろついている。
真ん中には机が置いてあり、社長が座るようないすが一つ。
その机の前にもう一つローテーブルがおいてある。ソファも一緒に。
そんな部屋の社長椅子に誰かが座っていた。
後ろを向いていて顔がわからない。
髪は長くて一つくくりにしている。
フムム……さて、顔はどんなものか。
やっぱりちょび髭?
触ってはフハハハハとか笑いそうなやつだったりして。
………違うよな。
「改めて、いらっしゃい」
椅子を回して飛び込んできた顔は———
にこにこ顔の、馬鹿っぽい顔だった。
…だよな。
声からして社長タイプじゃなかったし。
少し安心。
改めて顔をみてみる。
緑の髪に眼鏡をしたおじさん……いや、お兄さん?
若そうなのだが、おじいさんオーラ的なものをだしているというか。
癒しという感じ。
いてくれるだけで安心感を持てる。
やさしい皆のお父さん系…?
服もゆったりしていて、袴、なのかな。
甘えたり、いい子にしていたらお年玉をいくらでもくれそうだ。
普段はこたつで蜜柑をほおばりながらテレビをみている姿が浮かぶ。
まぁ、そんなイメージだ。
透が好む気持ちがよく分かる。
あんな裏の世界で生きている子供たちを特に愛していそうだ。
「やー、よく来てくれたねっ。楽しみにしてたんだよ。ははははは、疲れただろう、そこに座りなさい」
違う意味で透に似ている。
無駄にハイテンション。
姿から裏切らない性格。
子供たちに混じっても気づかれない。
たぶん。
「初めまして、透君からは聞いているよ。君がお兄さんかい?たしか、縁君だね。夜鐘君も初めまして」
ゆっくり話す口調からちょっとイライラを感じるが、すぐに消え失せる。
じゃなくて、
「あなたは透って言うんですね」
「ははははは、私の名前は高浅黄裁羅というんだ。よろしく頼むよ」
わざとじゃない。
それは、あの人の性格から分かる。
だけど。
それを気にしていない。
話がずれたことを気に留めない。
自分のペースにあわせる。
マイペース主義者か、この人は。
「えっと、なんだい?名前について?そうだね、それはね……」
フム……と考え込んで
「逆に訊くが、君は自分の名前をどう思っているのかな」
質問。
自分の名前、ねえ。
「僕は、まぁ、呼ぶために必要なモノかな」
自分らしい答えだ。
「そっか。私はね、名前はその人の象徴だと思う。名前があるからこそ、その人がいる。全ての動機の原点。
戦いで亡くなっても、ここに自分がいたと言えるための、一つの命だ。
僕はそう、思うのだけどね。
透君も、恐怖なんてつけないで、透明なままでいいんだけど、まぁそこは自身がいいなら別にいいさ」
なるほど。
それはまたまた
平和な頭をお持ちで。
気分が悪くなる言葉を訊いてしまった。
僕は
「それはいい考えですね」
と単純な嘘をついた。