ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 嘘吐少年の狂日   ( No.128 )
日時: 2010/12/01 17:08
名前: 時雨 (ID: bQbYMR0G)

初恋の相手だったからといって、悲しいとかそういう感情は、あまりでなかった。
そりゃ、初めは誰やねんってエセ関西人になりきって言ってみたが、分かるはずもない。

だって傷口見当たらないんだぞ?
どうやって死んでいると判断したんだろう。
やっぱり心臓の鼓動かな。

このまま家にもどろうかなー、と考えたがやっぱやめよかなーと。
だって、なんか怖いじゃん。
自分が守護者もちでなんかすごい人だってばれて、かなり怒ってたもん。たぶん。
ということで。


僕は自分の家の前に立った。


何で!?
あれぇー??反対方向に向かってダッシュしたのに。
でも、自分の家から逃げるとか。
家出じゃあるまいし。

「ただいまー」

かえってこないだろうが。
とりあえず、癖なので。

案の定、全く返ってこなかった。
しかも、いつも以上に静まり返っている。
………キーの音まで聞こえない。

階段を駆け上り、ドアを開くと
誰もいなかった。

透の姿がどこにも。
パソコンに向かい合わせてある椅子の上には誰もいない。
大きくない部屋には人影さえ。

家の鍵は閉まっていた。
たしか、追われているはずだろう?
いつでも入れるように鍵でも持っていったのだとしたら。
いつか戻ってくるよな……?

机の上に紙が。
まさか。まさかの?いや、ありえない。
そんなベタな物語は期待せんぞ。

とか思いながら紙を取ってみる。
その白い紙には
“探さないで下さい”
家出したかったのは僕ではなく、透。

じゃあ、なんで鍵がしてあるんだ。
家出するなら鍵は持っていかないはず。たぶん。
人によるのかな。

あー、まぁいいや。いや。いけないだろう。
うーん、どうしようか。
気づけば、透に会ってから半年以上経っていた。

あー、時間経つの早い。
僕の脳みそ追いつかない。
ついでに作者の頭もおいつかない。


「おかえりー」


と。
下から声が。
透の声じゃない。でも知っている声。
女の人の。

いそいで階段を下りる。
声が聞こえたリビングへ。

そして

「何、してんですか。玖桜さん」

ソファの上で寝転びながら、テレビを見ている。

「透がな、家出するから家にいてって」
「なぜ許すんですか」
「…透がそう、思ったからじゃないか?」

玖桜さんらしい答えだ。

「てか、ずっと出番がなかったんだ。少しくらいいいじゃないか」
「あー、そうですね?」
「疑問系になるな」

そういえばな、と玖桜さんが続ける。

「透からの伝言。どうせだから言うと、私、誰にも追われてないんだよね。今まで言わなくてごめんね」

声マネまでしてご丁寧に。