ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 嘘吐少年の狂日 ( No.135 )
- 日時: 2011/01/06 15:01
- 名前: 時雨 (ID: bQbYMR0G)
透がいる場所。そこは
「え、ここからいくの?」
「私はここを通りたくないんだが」
「僕も。なんか嫌な気がしてくるんです」
「俺は平気だぞ」
「……私は頑張ればいける」
僕が暇つぶしをしに行く広場を抜ければすぐのビルなんだが。
夜鐘と餡子ちゃん以外は無理みたいだ。
「なんでだめなんだろう」
「“嘘憑き”さんは分からないんですか?ここから何か言いにくい嫌な感じがするのを」
分からないんだ。ごめん。
普通の広場にしか見えないけど。
「んじゃ、遠回りして行こう」
鼎さんが仕切る。
遠回りすると十分ぐらいするけど。
十分より早くついた。
ビルは全部で五階建て。
「これ全部透の家だったんだよな。誕生日プレゼントだって」
「……へぇー、やるなぁ。きっと透がねだったんだろうけど」
「よく知ってるな、大正解。財閥の人も透を手放したくなかったから仕方なくな」
欲張りだ。
せめて一戸建ての家にしろよ。
それも贅沢だけど。
ドアは自動。あたりまえか。
中に入ると何もない。
ただ広い部屋なだけ。
その中央に一人。
誰かが立っている。
黒いローブのグラサン男。
「久しぶりだな、影喰」
「お前、あいつを裏切ったのか」
「裏切ってないさ。もともとこれが仕事だから」
玖桜さんは薙刀を構える。
「守護者同士の戦いか。いいだろう。これを記念してお前を殺してやるよ」
「威勢がいいな。私も久しぶりに殺ってみようかな」
影喰さんが日本刀と拳銃を構えた。
「始まる前に二階へ行くよ」
僕たちは階段を上った。
それと同時に戦闘が始まった。
———二階。
「待ってたよ」
いつものおじいさんオーラ。のほーんとした声で裁羅さんは言った。
「私の相手は誰かな」
裁羅さんか。
たしか黒丸さんに勝ったんだっけ?
「私が行く」
「僕もです」
名乗り出たのは二人。
魔罪屋の餡子ちゃんと葛雲君。
「店長は店員である僕たちが止めるべきです」
「大丈夫。死にはしない、必ず」
餡子ちゃんは木刀を構える。
葛雲君は……て葛雲君はどうするのだろう。
僕たちの中で最年少だし。
「あー、それは心配するな」
夜鐘が言う。
「見てみろよ」
葛雲君が何か取り出す。
……銃?え、あんなの持ってたの?
「実力もかなりだからさ」
僕たちが階段へ駆け込むとき、銃声が連発した。
……派手になるかもなぁ。
———三階。
「……ここまできたんだ」
三階にはかなりやる気のなさそうな深夜さんがいた。
相変わらず、目の下に隈がある。今日はなんか悲しそうにしている。
「……あまり、こういうのは好きじゃないんだ…。リーダーの命令でもする気がしない……」
透さー。
いや、八つ当たりはよくないか。
守護者にもこういう人がいるものなんだ。
「ここは私の任しといて」
「え……」
「さあさあ、早く行かないと始まるよ」
ぐいぐい背中を押す。
階段のとこまで来た。
「あの、」
「大丈夫だよ。早く行って」
「……殺さなきゃいいよね」
「ほら」
両者太刀と小太刀を持つ。
……日本だなあ。この二人をみるとなんとなく。
一方は服がそうじゃないけどさ。
———四階。
「「誰が私たちの相手?」」
着くなり言われた第一声。
二つの声が重なっている。
啄木鳥模様の布を頭から被って、顔には天狗の仮面。
声からして女の子。
「…双子?」
「ああ」
「「私は」」「きつつききいろ」「きつつきあいか」
「どうもご丁寧に」
ひらがなまで使っちゃって。
「んじゃ、僕はそろそろ上へ花を添えに」
「嘘付け、誰も死んでねぇだろ」
「ご武運を」
「こいつらとは一回戦ったことがあるからな。楽勝だ」
ああ、そうかい。
———五階。
このビル、一階一階が立てに長いからそこそこ高い。
飛び降りたか骨折じゃすまないくらい。
そんなビルの最上階。
透はいた。
この部屋は前の部屋と違って部屋が二つある。
もう一つの部屋はドアが閉まって中が見えないけれどパソコンが置いてあるんだろうな。
「久しぶりだね、お兄ちゃん」
「もう兄じゃないよ」
「ううん。お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ」
透は笑う。
「……本当に忘れたんだね。そりゃそうしたのは私だけど」
「忘れた?」
「ああ、気にしないで……」
突然。
あのドアが開いた。
隣にあった部屋から。
誰かが出てきた。
白い髪。の女。
「久しぶり、君」
その人は言った。
「透、なんでお母さんをあんな部屋に閉じこめちゃうかなぁ」
「……いや、うん、あの」
「大好きなお兄ちゃんには刺激を与えたくないのか」
「……ちょ、“猫”さん」
「透は“猫”って言わなくてもいいじゃん」
「あ、ごめん」
………………。
「君、何を突っ立てるの。愛しい妹との再会だろう」
「……は?」
「は?だから妹だって。え、透言ってないの?」
透は下を向いて……。
「久しぶり。お兄ちゃん」