ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 嘘吐少年の狂日 ( No.136 )
- 日時: 2011/01/11 19:23
- 名前: 時雨 (ID: bQbYMR0G)
僕には妹がいた。
僕と三歳くらい歳が離れた妹。
いつも僕のあとをついてきては笑いかけていた。
そんな妹を僕は『透』と呼んだ。
「なんで忘れてたんだろう……」
妹がいたなんて。
“猫”が言わなかったら一生分からなかった。
「透が、忘れさしたんだよ。私のわがままで。透は反対したんだけど」
“猫”が言った。
透はまだ下を向いている。
「家族を切り離そうと思って。初めは私が死ねばいいと思ったから、死んでみたんだけど、死ねるわけないでしょ。最強だと言われた私が死ねるわけなかった。でも付き添ってくれた夫は死ぬし。だから、“嘘つき”を離そうと思った」
“猫”は僕の名前を言わなかった。
それが当然のように話す。
「君の記憶を消して君と会わないようにこの部屋からあまりでなかった。君の会わないように透が付きっ切りでね。でも、透は君が愛しくなったんだね。君に会うと言った。だから、君の家に行かせたんだよ」
君君と。
「なんで僕の名前を言わないんですか。“猫”さん」
“猫”は笑った。
軽く、見下したように。
「じゃあ、なんで君は私の名前を呼ばない?」
神凰詩和。
本名は頭にでてくる。
なのに、お○○○○。
でてこなかった。
「本能で感じてるんだよ。私をそう呼ぶのを拒む。嫌われたなぁ、私」
どうでもいい、とでも言うように。
透は下を向いている。
「君と会ってから透は家族全員で住みたい、暮らしたい、そう思ったんだ。私は反対したけど、でも一つだけあった。君の反対、闇凰夜鐘に会わなかったらできる。反対同士が会わなければ。それで一ヶ月会わなかったら別にいいよって。でも会ったんだね、これが。君が日本にいるなら、あいつはその反対にいるべきなのに」
……それで透は夢が消えた、といったのか。
悲しそうな顔で。
透は顔を上げた。
泣き出しそうな顔を我慢している。
「透は私のことを君に教えようとしたんだ。ここに連れ出して、君の真実を教えようと。でも、それでも透の夢は叶わない。透にさっき聞いたんだ、兄と母、どっちを選ぶか。透は君を選んだ」
一度切って
「だから、私を殺せ」
透も僕も。
“猫”を見た。
何を、言ってるんだ。
どこから取り出したのかピストルを僕に投げて渡した。
「君にはその義務がある」
「…………」
「やっぱだめか。展開がはやいからおいつけないのかも」
「…………」
「じゃぁ……零無の子、あの子を殺したの私だ」
…………?
「君が本気になってくれるための糧にした」
「…………」
「…目が変わったな」
「…これは澪ちゃんのためじゃない」
“猫”が早く終わりを望んでいたから。
そういう風に急かすから。
「最初で最後の“猫”へのご褒美だから」
「ありがとよ、君」
僕は引き金を引いた。