ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 嘘吐少年の狂日 ( No.20 )
日時: 2010/08/31 19:33
名前: 時雨 (ID: bQbYMR0G)

現れたというか建てられていた?



いやほんと豪華ですねっ!

みたいな。



透は僕らより少し送れて到着した。


「やっほー、お兄ちゃん悪さしなかった?心配だったんだよー」

「しないよ。心配するんだったら透も同じ車に乗ればよかったじゃないか」


「僕は邪魔されたくない用事があったんだよね。ほんとはみんなと喋りたかったよ」

しょぼーんとうなだれる。


「なあ、透。邪魔されたくなかった用事ってなに?」


「う?ああ、えーとね……」

「おい、お前ら行くぞ」


澪ちゃんにさえぎられたので答えがきけなかった。



でも結局は「それじゃあ違う車に乗った意味が無いじゃん」とでも言って教えてくれなかっただろう。

車の中でパソコンをしてたところまでは想像できるんだけど。









中も外に負けず、とてつもなく広かった。

廊下が延々と続き、終わりがあるのかさえ疑問になる。

ところどころ左右に曲がり迷路みたいだ。



「澪ちゃんさ、よくこの複雑な道が憶えれたね」



「小さいころからここで育ってるんでな」


ごもっともな正論だ。

さすがに小さいころから住んでれば嫌でも覚えるだろうな。
この記憶力のない僕でも。



「ねぇ、二人とも車の中で何話したの?」


透が興味津々に訊いてくる。


「あー……えーと、なんだったっけ?」


ほんとに忘れた。

つい数分前のことだったのに。



「お兄ちゃんには最初から期待してないから……」


呆れられた。

そうだろうな。



「たいした話はしてないぞ」

澪ちゃんは憶えているみたいだ。

「いいよっ。退屈しのぎになれば」

退屈しのぎかよ。



たしかに退屈だけど。




「…こいつの顔がどうにかならないかってな」




ああ、思い出した。

そうそう。この顔が気にいらないんだっけ。


「恐怖の透明。お前はどう思う?」






「私は好きだよ。お兄ちゃんの顔」





予想内の答えだった。



「出会った時からこの顔だったんだけどね、見た時に笑えたよ。こんな人間がこの世に存在したんだって。      
     

             歪な人間って存在したんだなって」



やっぱり。

1ヶ月前と変わらない。