ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 嘘吐少年の狂日 ( No.21 )
日時: 2010/08/31 23:28
名前: 時雨 (ID: bQbYMR0G)

「……さすがは恐怖の透明といったところか」



「んー?なんのことー?」


ニコニコと笑う。


いいなぁ。表情豊かで。


「お兄ちゃん、あの時の言葉を憶えてる?」



1ヶ月前、僕の家に上がって言った。



———ずっと変わらないでね。



あの時は分からなかったけど。


なるほど。



「今も変わらないでくれてありがとね」


「まだ1ヶ月しか経ってないんだけど」



「お兄ちゃんは物忘れがひどいじゃん」


「………」


そうだけど。
言い返せないけど。




「ここだ」



さっきまでの廊下が急になくなったそこには十メートルほどの襖が。


こういうのって本当に存在するんだな。


開くのが面倒そうだ。



「例の人たちを連れて来た。入るぞ」


返事が来るのを待たずに襖を開いた。


普通は待つだろ。



自分とこの当主に対してあの態度はない。





「あら、澪さん早かったわね。それと、いつも返事を待ちなさいと言ってるでしょう?」



五十畳はあると思われる部屋の奥に座っている女性がいた。


たぶんあの人が当主だろう。


でも

「………」


「どうした?」


「いや、その、当主だっけ?ほら……」



ラフにスカートとかタンクトップとか着ていると思っていた。
澪ちゃんみたいに。


だけど、当主が着ていたのは着物だった。


「服のことか?そりゃ零無は派手好きが多いが当主だけはべつだ。だがそれなりには派手だと思う」


あ、本当だ。


着物の色が真っピンクだ。

髪も金髪だし。


「あなたたち、立っていては疲れるでしょう。そこに座ってください」


でも、おしとやかだよな。

外見に似合わず。




それに


「お幾つですか?」


「十七です」


若い!


最低二十を想像してたのに。



「恐怖の透明さんも」


「ありがたく」


…透の雰囲気が、違う。


ふわふわ感がない。

 



「では、自己紹介といきましょう。私は零無家当主、零無癒毬と申します」