ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: JUNK!!‡僕を壊した君との恋話 ( No.3 )
日時: 2010/08/29 22:16
名前: 渡々羽 (ID: OcUNQWvQ)

:1.「僕はあの席替えで」:

「席替えするぞ!!」

中学1年生2学期のはじめ。

そろそろ中学校生活にも慣れてきた頃。

3時間目の道徳の授業で先生はふとそう言った。

1学期に1回やったきり変わってない席順だったせいもあり、クラスからも大きな歓声があがる。

「やったね!!遂に席替えだよ!!」

隣の席の子も感極まった声でボクにそういう。

「うん!君、今までで10本の指に入るくらい良い隣人だったよ」

ボクは席替え宣言されるたび、隣の席の子を今までなった中でどのくらいよかったか順位付けし、告げていた。

勿論、順位が良い人しか言わない。最悪の人に最悪と言ってもその人との関係が悪くなるばかりだから。

誰にも嫌に思われず、誰からもとにかく良い奴だと思われておくこと。害がない人間になること。

自分の居心地をいつでもどこでも良くしておくこと。

それがボクの人生最大の目標だ。

まぁ、できているのか?と聞かれればそこそこと答えるしかない目標だが。

てか、そもそもそんな目標を秘密主義のボクは誰にも話しやしなかった。

先生が黒板に席をチョークで書き、一人一人のマグネットを一枚一枚間をわざと溜めて張っていく。

一枚張れば歓声があがり、一枚張れば誰かが愚痴をこぼし、もう一枚張れば無言になる。

誰もが自分はまだかまだかと待ち続け、張られるとリアクションをするのは当たり前だと言ってもおかしくない。

ボクはといえば、毎日提出する連絡や準備物、その日の反省を書いた反省帳に「窓際の時計が見える席にしてください」と書いておいたので先生が希望を叶えてくれるかドキドキだった。

先生のボクへの印象はとてもよく、きっとやってくれると確信はあった。

ボクの目標は友達だけでなくボクに関わる全ての人を対象としていた。

案の定。窓際の時計の見えやすい一番後ろ。

ボクはこっそり机の下でガッツポーズした。

「よし。じゃあ移動しろ!」

先生が張り終わってそう言うと、皆が一斉にイスを机にあげ移動を開始する。


移動が終わると、やはりそこは時計が凄く見えやすく3階にある教室の窓際から見える外は授業中ぼぉっと見るのに適していた。

隣は昔から腐れ縁で時にはカップルとはやしたてられた岸來ノゾ(きしらい のぞ)。

右前は昔からの幼なじみの佐藤アキ(さとう あき)。

左前は友達とも言えないが初対面でもない鎚壱ユーキ(ついいち ゆーき)。

ノゾは頭がいいから宿題を見せてもらえ、アキは情報通だから学校の全ての情報を聞ける。ユーキも悪い仲とはいえない。

こんなにいい席順は今までなかった。

勿論班もボクとノゾとアキとユーキ。

今日はついてるなぁー。

「じゃあ、班長はノゾで決まりね!!」

ボクは即そう言った。

「そうだね!!頼んだよノゾ!!頭いいんだから」

アキも一緒にボクに乗る。

「はぁ。わかった」

ノゾが溜息をついて了承。

次はユーキに話しを振りたいのだがボクは何もネタがないのに初対面に近い人と話せるほどのアドリブ精神を持ち合わせていなかった。

「僕自主学習提出係!ユーキは?」

アキが上手く振ってくれた。どうやらアキとユーキは面識があるらしい。

まぁ、なくてもアキはかなり人見知りせず、5秒あれば友達になれる奴なのだが。

「ん?じゃあ俺反省帳の提出係」
「じゃあボク提出物出したかチェックする係で!!」

分担や班目標など、かなり決めるのに時間がかかるものだが、今回はすんなり終わってしまった。

ノゾが先生に決めたことを伝え、後はトークタイム。

「ノゾと崑識こんしきってさ。小学生の頃いい感じだったよね?」
「は?違うから!!アキ、ガセ流さないでよ」

アキの発言に瞬時に即答した。

…言い忘れたがボクの名字は崑識。この辺の地域では珍しくもなんともない名前だ。

「俺もそれ聞いたことある!!」
「いや嘘だから。周りがはやしてただけだって!」

反論が苦手なノゾに代わり、ボクは独りで弁解する

「てかさ、ユーキと崑識って初対面?」

アキは空気をきれいに読み、話すきっかけをつくってくれた。

ボクとユーキは顔を見合わせる。

「いや、ボクが小学生の頃何度か話してるよ?シャムさんと仲よかった時だから5、6年じゃないかな?」
「え?小1の頃同じクラスだったよ?おまえ1ー1だろ??」
「あれ?そうだっけ??」

そう言われればそうだったような。どちらにしろあまり話はしなかった。友達の友達の存在だったはずだ。

シャムさんとは斉藤シャムの事。アキとボクは小学生の頃側近並に隣にいた。まぁ、途中からは自然に離れていったんだけど。

なんだか大人っぽくってリーダー性あってついていると何かと楽だったんだ。先生からの印象は最低だったけど学年では知る人はいないほどだった。

アキはまだつきあってるみたいだが、ボクは微妙なポジションにいる。ぶっちゃけアキのお陰でつながってるようなもんだ。

「あぁ、シャムさんね。今1ー5だよね?2学期なってから見てないけど」
「そなの?」
「うん。2階の北校舎だから離れてるけど、なんだか不登校なっちゃたらしいよ」
「崑識って結構うといんだな」
「いやいや、ボクすぐ忘れちゃってさ、鈍感だし」

アキのおかげでユーキとスムーズに話ができる。

「ふーん。まぁよろしく!」

ユーキがボクに笑いかけてくれる。

ボクの目標はこういう風にいいムードでいられるようになっている。

ボクの居心地がいいということ。それは周りが笑っていることだから。

「うん。よろしく!ところで——
「何?」

ユーキが首を傾ける。

——名前、なんだっけ?」
「ユーキだよ?」

ユーキの笑顔がアキにノゾに、呆れる顔とともに広がっていく。

これはわざとだった。

目標を達成させるには、時には嘘も必要だった。