ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 回転と僕 ( No.9 )
日時: 2010/09/08 21:29
名前: 95 ◆/diO7RdLIQ (ID: lD2cco6.)

第四話  出会いの始まり −②


 「え、マジで?」

 目の前で目を大きくする幼顔の男。驚いた。
 この制服…。僕と同じものだった。

 「ちょお宮木〜!こいつ俺らのバンドに入りたいんだって!てか同高じゃね!?」

 出演者控え室でクーラーの真下で一人はしゃぐ。
 宮木と呼ばれたのはベースだ。何も喋らず、イスに座っても尚俯き、汗を拭いていた。
 
 「ふーん。今の聴いてか?」

 ドラムの大男が僕に近づく。見た感じの年齢は四十代か五十代っというところ。

 「はい…。ギターを募集してるというポスターを読みました。僕、ギターやってるんで」
 「ほほ〜。良いんじゃねえか?まあ、俺はドラム代理だから決定権はないけどな」
 「え、そうなんですか」

 ドラム代理とはどういう事だろうか。
 ドラムもいないということか?いや、それなら募集要項にもドラムを明記するはずだ。

 その時、ベースがチラッと僕を見た。目が合う。
 髪と髪の間から現れた瞳は、光が無く、いったいどういう思いで僕を見たのか、分からなかった。
 僕は何も言わず、目をすぐ逸らした。

 「俺はね、桜崎八雲ってーの。よろしく。あ、よろしくってのはバンドとしてよろしくじゃなくて同じ高校の人としてよろしくって事ね。で、何組の何さん?」

 わざわざそんな事言わなくても。いまいち掴めない。このヴォーカル。いや、桜崎。

 「1−5。吉川、春臣です」
 「ハルオミ?かっけー!俺は2組!」
 「そっちだって、ヤクモって。聞いた事ない」
 「そだな!あははは!」

 本当、陽気な奴だ。これから学校でも会うかもしれない。でも仲良くやっていけそうな気がした。

 「うーん、まあ吉川君とはこれから仲良くやってくとして。バンド話はまた別なんだよねぇ」
 「実力とか、見るか?」
 「あー!それも大事!でもね、こっちのお姫様が喩え実力があっても気に入らない事にはどうしようもないわけ」

 お姫様?ここに女子は一人もいないが…。
 まさか。

 「お姫様ぁ?ぶはは!あいつはどっちかってーと女王様、だろ!」

 ドラムが笑う。僕は聞いた。

 「あの、そのお姫とか女王って・・・?」
 「あー。ドラムだよ。このバンドの本当のドラマー。俺はそいつの親戚みたいなもん」

 ドラムは女。そこに特に大きな感動があった訳ではないが、女性が力強くドラムを叩く姿を思い浮かべると、漠然と魅力的に感じた。

 「う〜ん…。まあ、とりあえず、行きますか!」

 桜崎がパンッと手を叩いた。

 「どこへ…?」

 僕がそう問うと、桜崎はニヤッと笑い、僕を見た。

 「女王様のところへ!」