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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: -モノクローム- ( No.2 )
- 日時: 2010/09/04 13:29
- 名前: ぱびこ ◆rw9vQh4IsQ (ID: memccPfd)
-プロローグ-
…荒い息づかいとなま暖かい息が、耳元を掠った。目の前を何か、大きな、闇に包まれたものが通り過ぎていく。
少年と少女が背と背を互いにつけ、息を整えた。
緊張と恐怖でバクバクと高鳴る心臓に手を当てると、背後から手が延びて胸元の手に重ねられ、肩をビクリと震わせた。
背後の少女の手だった。
「相変わらず臆病者だなぁ」
背後の少女が呟き、小さく笑うと、自分もつられてこわばっていた表情が緩んだ。
彼女が笑うとホッとするから自分でも不思議だ。
自分の組まれた手から、少女が手を引こうとする。
もう笑顔は見れない———。
ふいにそんな想いが頭から指先まで駆け巡り、思わず少女の手首を掴んでしまった。少女が驚いた顔をこっちにむけた。
「この犯人探しに・・・終わりってあるのかな」
これが自分の声かと問いたくなるほど情けない、涙声がこぼれた。
「何を言ってる。私達はもう見つけたんだろう・・・犯人。後は・・・殺せば・・・何もかも終わる」
少女の声は、大きな、大きな黒い何かが地の底から這い上がってきたかのように、暗闇を波打つように静かに揺らした。
突然、少女が一歩踏み出したかと思うと、小さく腕を広げ、自分に抱きついた。
いきなりの出来事に身体を硬直させていると
「そうしたら、一緒に帰ろう」。
少女が耳元で呟いた。
ゆっくり閉じられた瞳からは、暗闇に紛れ、涙が一筋、少女の頬を伝った。
少女は犯人が誰だか知っている。その人物を殺さなければならない。
これから起こるのは
悲しく、残酷な・・・。
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