ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: -モノクローム- ( No.4 )
- 日時: 2010/09/04 17:09
- 名前: ぱびこ ◆rw9vQh4IsQ (ID: memccPfd)
-第一話-
いつもと全く変わらぬ駅。
人の多い時間帯の朝、アーベット・ファンロンは隣を歩く少女、イザベラ・ウォーカスギアを気遣っているのか、横目でチラリと見ながらイザベラの鞄を掴み、前を行く。
何故駅に居るか。
それは、数日前——。
イザベラからの連絡が届いたのは突然の事だった。
彼女に呼ばれ、港町を一望できる灯台に駆け上っていくと、いつもの見慣れた風景が360度続いていた。
夕日に照らされたこの灯台は、町のシンボルとして皆に大切にされてきた。僕とイザベラもこの灯台が好きだ。
階段を登り終え、小さく聞こえた声に振り向くと、イザベラが手摺に肘を乗せその手で鞄を揺さぶっていた。
僕がイザベラの隣に来るなり彼女は、無言のまま鞄をあさり出した。鞄から引っ張り出されたのは、少しクシャクシャになった差出人の分からない手紙と何かが入っているのか、膨らんだ大きな黄土色の封筒。
それを僕に差し出した。
「これ何?」
僕の問いかけにイザベラは答える気も無さそうに、手紙を見つめた。多分「開けて見ろ」だと思う・・・。
黄土色の封筒を脇に挟み、まず手紙を開けるとリヴァセントと書かれた切符と丁寧に折りたたまれた手紙を開く。
一行目・・・。
二行目・・・。
三行目と視線を手紙に滑らせる。
読み終え、目をあげてイザベラを見ると、イザベラはまた何も言わず今度は黄土色の封筒に目を移した。
手紙をイザベラに返し、封筒を開け中身を覗き込んだ僕は、目を丸くした。
中には銃と、これもまた丁寧に折られた透明の袋に入れられた一つの銃弾。そして銃口に縛り付けてある紙。
慎重に紙の結び目を解き、紙に書かれた文字を読むと、また驚くべき内容が書かれていた。
「イザベラ・・・これ」
僕がイザベラに怯えた表情をむけると、彼女は真剣な顔で僕を見つめ返して頷いた。
「・・・私の親を殺した奴からの・・・招待状だ」
渡された手紙、内容はこうだった。
『7年前 君の両親を殺したのは"僕"だよ
"僕"は君の両親の生まれた地、ウィンドルーミ行きの列車、リヴァセント号に乗る
その列車が舞台だ
さあ、"僕"は列車のどこかにいる
"僕"を見つけてごらん』
そして銃口に結び付けられた紙・・・。
『銃弾はたった一つ
君が"僕"を殺すまで
君には"僕"を殺せない』
イザベラのもとに届いた差出人不明の手紙と列車リヴァセントの切符、銃と一つの銃弾を持ち、僕等は駅にやって来た。
僕は、さすがに女の子一人で危険な場所に行かせてはどうかと思い、イザベラが何も言わなかったのでついて来た。
まもなく、駅に列車リヴァセントが着き、二人はゆっくりとあいたドアに足を踏み入れた。