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Re: 生ける屍 ( No.145 )
日時: 2010/10/09 16:39
名前: メルー (ID: hFRVdxb.)

【第二十七話】

 — カツーン カツーン —

俺の足音が 暗い街 で大きく響く。


「みんな どこ行ったんだ?」


俺は呟く。

学園から脱出した時は みんな いたのに。

今は誰もいない。


「……」


急に独りになったせいか、もの凄い恐怖が俺を襲う。

こんな時にアイツ等に集団で襲われたら間違いなく生き残れないだろう。

せっかく 学園を脱出したのに……


そんな風に一人で怯えながら歩いていると前に誰かの後ろ姿が見える。


あれは……


「龍宮!」


そうだ! 絶対に龍宮の後ろ姿だ!

俺は走って龍宮に追いつく。


龍宮がこっちを向かない。


「…龍宮…?」


もう一度呼びかけてみるが やはり振り向かない。

何かあるのか?

俺は龍宮の肩に手を置き、呼ぶ。

「龍宮?」


ようやく 俺の方を向いた龍宮は……


「ァァァ……アァ」

「!?」

狂人になっていた。

「龍宮!?どうして!?」



ここで 俺は気付いた。

「「アアァ……」」

俺が 「みんな」 に囲まれている事に。

それも 「みんな」狂人になっている。

工藤も由美も南瀬先輩も如月先輩も沖野も。



            「みんな」狂人。



「何で?さっきまで みんな 大丈夫だったのに…」


俺は完全に混乱した。


そして 狂人と化した みんな に俺は喰われた。




・・
・・・


「!?」

俺はバスの助手席で目を覚ました。


隣では沖野がバスを運動していて、他の みんな もちゃんといた。


「夢だったのか…」


俺はため息を吐(つ)いた。

そんなに 精神が圧迫されていたのだろうか?

みんな は安らかに眠っているのに。


「真君?」


運転する沖野が俺を呼ぶ。


「真で良いよ。で どうした?」


「いや…何か魘(うな)されてる様だったから…」


「……悪い夢を見てたんだ…」


「夢?」


「あぁ。……それも かなりの悪夢。」


「それは お気の毒だね。もう一度寝る?」


「いや 遠慮するよ。……悪いけど…少し俺の話し相手になってくれないか?」


「……僕で良いなら良いよ。」


「なら、まずは自己紹介からだな。」


「じゃぁ 真 からどうぞ。」



俺と沖野は この後 笑いながら話し、お互いを少し知り、俺は気分が少し晴れた。


空は朱から闇に変わっていた。