ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 生ける屍 ( No.151 )
日時: 2010/10/11 16:50
名前: メルー (ID: hFRVdxb.)

【第28話】

「え?じゃぁ、真のお父さんはアメリカにいるの?」

「そうなんだ。それに 忙しいらしくて全然帰ってこないんだ。」


俺は沖野と互いの身の上を話していた。


「そのお父さんの仕事って何なの?」

「ん?俺の父さんは」

「!?」


俺が父さんの仕事を明かそうとした時、沖野が急ブレーキをかける。


「うわっ!」

「キャッ!」

「!?」


突然の停止にバスの中で悲鳴が響く。


「ど、どうした?」


俺が勢いあまってフロントガラスにぶつけた頭を押さえながら、沖野に聞く。


「ごめん…… 何か が急に出てきたから…」

「何か?」


俺は 沖野が指差す先を見てみると、


「…ホントだ。 何か いる……」


確かに 何か が俺達の乗るバスの目の前にいて、道を塞いでいる。

ヘッドライトがギリギリ届かないので姿は見えないが、光る目だけはしっかりと見えた。


「あの目は…」

「猫だろ。」


俺の後ろに工藤が立っていた。

ついでに言うが、工藤も頭を押さえている。


「猫…か?」

「沖野。バスを近づけて。」

「う、うん。」


工藤が言うと、沖野が 何か にゆっくりとバスを近づける。


「猫だ…」

「だろ?」


何か の正体は工藤の言うとおり猫だった。

全身が黒い中、右耳だけが白い。

そんな変わった猫が座っていた。


その猫は俺達のバスが目の前に来ても道を譲らない。


「クラクションでも鳴らす?」


沖野が提案する。


「あまり音は出さない方が良いな。」


俺は それを却下する。

今は見えないが アイツ等がそのクラクションに反応して集まってきたら大変だからな。


「そうだよね……」


「俺が直接行くよ。」


「え?大丈夫?」


「大丈夫だよ。何かあればすぐに戻るし。」


「……分かった。気をつけて。」

「あぁ。」


俺は静かにドアを開けて、一人でバスから降りた。

猫はまだ動こうとしない。


「怪我でもしたのか?」


俺は猫に話しかけながら、猫に近寄る。


すると 猫が立ち上がった。


そして 俺のズボンの裾を噛んで、引っ張る。


「?どうしたんだ?」


俺は 不思議に思い、いったん猫から少し距離を置くが、今度は猫が自分から俺に近寄り、またズボンを引っ張る。


「この先に何かあるのか?」


当然 猫は答えたりしない。

ただ


「ミャ〜」


と鳴くだけ。


猫が引っ張る先には何かあるのだろうか?


何かあるなら、それは 希望 なのか?

それとも 絶望 なのか?


行くべきなのか?

行かないべきなのか?


全く分からない。



だだ 確実なのはその判断が

          
            俺にあるって事。