ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 生ける屍 ( No.160 )
- 日時: 2010/10/22 16:37
- 名前: メルー (ID: Zjcetz5k)
【第二十九話】
俺は猫を抱き上げようとしたが、猫は嫌がり俺の手から離れた。
そして そのまま俺を引っ張っていた方向にシッポを振りながら消えて行った。
俺は 闇に消えていくソイツを見えなくなるまで眺めながら 気付く。
この辺にはアイツ等がいなのか?
さっきからバスのエンジンが小さいながらも響き続けているのに、アイツ等は全く集まってこない。
だけど 由美の『アイツ等は音に反応する』という考えが今更 間違っているとは思えない。
なら、アイツ等はここから別の場所に移動したのか?
……考えていても分からない。
俺はバスに戻り、ずっと待っていた沖野に言った。
「あの猫が消えた方に出してくれ。」
「え?」
「…猫が何か教えてくれたのか?」
沖野は困惑し、工藤はからかう。
「何にも教えてくれなかったよ。」
俺が少し笑いながらそう返してやると、沖野と工藤も笑う。
「分かった。出発するよ。」
「あぁ、頼むよ。」
沖野は再びバスのハンドルを握り、アクセルを踏み込む。
工藤はまた眠り始める。
俺はバスにいる他の全員を見てみた。
龍宮と由美は安らかに眠っている。
如月先輩と南瀬先輩は目を瞑ってはいるが、間違いなく眠ってはいないだろう。
証拠に 手にしている武器がバスの揺れに反して全く動いていない。
いわゆる 精神統一 や 瞑想 の類だろうか?
心に変な圧力を感じている 今の俺ならちょうど良いかもしれない。
俺は近くの椅子に座り、2人と同じ様に目を閉じて、心を無にするように努力してみた。
当然 そんな事は出来なかった。
無にするどころか今日一日の出来事があまりに鮮明に蘇り、心の圧力は増すばかり。
そして 状況は更に変わる。
まず沖野が それ に気付きバスを静かに停める。
そして 俺に それ を知らせる。
「あ、あれは……」
「絶体絶命…か……」
俺達がバスを停めた少し先の場所では、他の生存者達が狂人と闘っていたのだ。
多くの狂人に囲まれながら。