ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 生ける屍 ( No.167 )
- 日時: 2010/10/23 14:21
- 名前: メルー (ID: 51/AcAGl)
【第30話】
沖野が気付くのが早かったおかげで 俺達は狂人に気付かれる事無くバスを停める事が出来た。
もちろん 狂人と闘う生存者達も俺達には気付いてない。
「どうする?」
沖野が俺の判断を仰ぐ。
俺は
「どうするも何も」
助けに行くに決まってる と言おうしたが、後ろからの声に妨(さまた)げられる。
「その結果に何が起こるかを十分に考えたのか?」
「え?」
如月先輩だった。
「もし今 俺達が彼等を助けに行けば、彼等を救えるかもしれない。」
「……」
「だけど 逆もまた然(しか)り。それに 助けられないどころか自分達の命でさえ無くしてしまうかもしれない。」
「……」
「…それでも…助けに行くのか?」
俺は如月先輩の瞳から逃げずに言葉を返した。
「たとえ…死んでしまう状況だとしても……俺には…困っている人を見捨てる事は出来ません。」
「……半田は例外なのか?」
「!!」
如月先輩の呟きは俺の心に突き刺さった。
自分の中ではちゃんと解決したと思っていたが、やはり 傍から見れば 俺は 半田を
見殺しにしたのか?
助けを請う半田を。
「…あいつは……俺が差し出した手を自分で払ったんです。」
俺は そう言うしか出来なかった。
実際 半田が正直に本音を言えば俺は助ける気だった。
「それが…君の…考えか…」
「はい?」
「いいや、何でもない。 それじゃぁ 本題に戻るが、別に俺達は彼等を助ける必要なんかどこにも無い。」
「……」
「このままバスで素通りすれば それで終わり。」
「……」
「わざわざ 危険の渦中に自分から飛び込まなくても良いんじゃないのか?」
「……」
「それに 彼等が 普通 かどうかは分からない。もしかしたら半田の様に人を平気で見捨てるかもしれない。」
「……」
「それでも助けに行くのか?」
「……」
俺は答えられない。
そこまで言われてしまうと、どうすれば良いのかが分からない。
助けたいが俺一人で行っても絶対に助けられない。
全員で行けば助けられるかもしれない。
だけど 如月先輩の言うように 俺達が身を挺(てい)して助ける必要は無い。
見なかった事にして見捨てればいい。
それこそ 半田のように…………
俺は気付いた。
ここで 俺達が見捨てれば 彼等から見る俺達は 半田そのものじゃないのか?
それは 嫌だ!
俺はあんな奴と同じにはなりたくない!
俺は答えを見つけた。
「…決断はついたか?」
如月先輩が俺の返事を待つ。
「先輩……俺は……彼等を助けに行きます。」
俺は如月先輩の目を据(す)えて 自分の決断を伝えた。
「……理由を教えてほしい。」
「簡単な理由です。俺が……半田と違う人間でありたい それだけの事です。」
「……なるほど。……納得したよ。」
如月先輩が小さく笑った。
もしかして 俺はまた試されてたのか?