ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 生ける屍 ( No.174 )
- 日時: 2010/10/22 21:29
- 名前: メルー (ID: Zjcetz5k)
【第三十一話】
「じゃぁ 先輩も」
助けに行ってくれるんですか と言い切る前に 如月先輩は言った。
「納得したのだから、止める理由はないし 手伝わない訳にもいかない。」
先輩は小さい笑みを浮かべたまま木刀を持つ。
その姿はまるで侍の様だ。
「だけど、どうやって助けに行くんだ?」
いつの間にかに起きた工藤に核心を言われる。
「それが……問題なんだ。さっきから何も考えが浮かばないんだ。」
「お前は……考え無しで助けに行く気だったのか?」
工藤が呆れたように言う。
「じゃぁ お前には何かあるのか?」
「……ない。」
「お前だって…」
「…悪い。」
俺と工藤の意味の無い会話の間も 生存者達には危険が迫っている。
「どうすれば……」
「…バスで突っ込もう…」
「は?」
沖野が小声で提案した。
「出来るのか?」
「少し危ないけど……無理じゃないとは思うよ。」
「なら 早く助け」
「待った。」
工藤がまた口を挟む。
「今度は?」
「俺は助けに行くのは賛成だが、他の人にも確認を取った方がいい。」
確かに工藤の言うとおりだ。
特に龍宮と由美なんてまだ眠ったままなんだから。
まずは 起こさなければ。
俺は龍宮の席に近づき、肩を揺らして起こす。
「龍宮 起きろ。」
「ふぇ〜?もうあさなの〜?」
「……お前寝起きそんなに悪かったのか…」
今度は龍宮の一つ後ろの席で眠っている由美を起こす。
「由美 起きてくれ。」
「…ん?…何かあったの?」
「緊急事態だよ。」
「内容は?」
由美は龍宮とは違って寝起きは良かった
が
「……ねぐせ凄いな…」
「あ」
由美の髪はいろんな方向へはねていた。
龍宮と由美がいつも通りになってから状況を説明すると
「助けに行くわ。」
「当然よ。」
と あっさり言ってくれた。
これで あとは南瀬先輩だけだ。
そう思い南瀬先輩の座っていた方を見ると、
「あれ?」
南瀬先輩はもう瞑想してはいなかった。
手製の槍を掴んで助けに行く気 満々だった。
本当に不思議な人だ。
俺は心の中でそう呟き、運転席に近づき沖野に言った。
「突撃だ!」
「了解!」
沖野は小さく笑いながらアクセルペダルを踏む。
速いとは言えない。
むしろ規定速度ぐらい。
だけど これ以上出して あの狂人の群れに突っ込むのは転倒の恐れがあるのだ。
もし転倒なんかしたら それこそ死ぬしかない。
だから沖野は速度にも気を付けているし、ハンドルにも集中している。
そして 生存者達 と 狂人 が俺達のバスに気付いた。