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Re: 生ける屍 ( No.193 )
日時: 2010/10/28 16:50
名前: メルー (ID: UXP/rFHj)

【第三十三話】

バスが停まり、ドアが開くと 俺 工藤 如月先輩 南瀬先輩 はバスから飛び出た。

そして 必死に抗(あらが)っている三人の救助に向かった。


南瀬先輩の槍は狂人の体を貫き なぎ払う

如月先輩の木刀は狂人の体を打ち 蹴り飛ばす


高校生とは思えない動きだ。


当然 俺と工藤もボーっとしているわけじゃない。

俺達も包丁で頑張って狂人を牽制している。


「真君!」


そんな時 南瀬先輩が俺の名前を呼ぶ。


「コイツ等は私と影璃が引き受ける!だから 彼等を頼むよ!」


そして そう言いながらも手の動きは休まらない。


「分かりました! 工藤!」

「あぁ!」


俺と工藤は狂人達に出来る限り時間を取られない様に走り出した。

もっとも 生存者と俺達の距離はそんなに無かったからすぐに接触出来た。


「大丈夫ですか!?」


俺が尋ねると、


「大丈夫だ。だがお前達は誰だ?」


黒髪のオールバックが答えた。

やはり 彼がこの三人をまとめていたんだろう。


「その話しはあとでします!ですので今はあのバスに向かって下さい!」

「分かった。 涙!健吾!俺の後に続け!」

「…分かったわ。」

「了解や!」


涙と健吾と呼ばれた二人は返事をするとすぐに彼等のリーダーの後に続いた。


やっぱり普通ではない。

あの統率力は何かある。

唯の高校生が出来る指揮ではない。


俺がそんな事を考えてボーっとしていると、


「真!俺達も早く戻ろう!」

「あ…あぁ。」


工藤に話しかけられて 俺は我に戻った。


そうだ…今はこんな事を考えている時じゃない。

助けられればいくらでも話しを聞く事は出来る。


俺はそう思い三人の後に続いた。

工藤もそんな俺を見て続く。


が 如月先輩と南瀬先輩の奮闘でも防ぎきれなかった二体の狂人が三人の前に現れた。


「工藤 行くぞ!」

「分かった!」


俺と工藤はその狂人を倒そうと走る速度を上げて 三人の前に立とうとしたが




その必要は無かった。



俺達全員が見た光景はとても信じられなかった。




彼等のリーダーは目の前に現れた狂人に素早く近づくと 狂人の顎(あご)を掴んで そのまま後ろに回り、


    —— ゴキッ ——


首の骨をへし折った。

それも 二体連続で。


一瞬の事だった。

だが その一瞬で彼は二体の狂人を倒したのだ。


それも 素手 で。



俺と工藤は驚きのあまり立ち止まり。


如月先輩と南瀬先輩は動きは止めなくても 驚いている。


バスの中の三人は口を開けて驚いている。


驚かないのは それをやってのけた本人と一緒にいた二人だけ。