ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 生ける屍 ( No.203 )
- 日時: 2010/10/28 19:04
- 名前: メルー (ID: UXP/rFHj)
【第34話】
一瞬で狂人を倒した本人は地面に倒れた狂人を見下す。
首だけがありえない方向を向いている。
しばらく見下していたが 突然 興味が無くなった様に再びバスに走り出した。
後ろの二人もそれに続く。
二人は倒れた狂人を見る事無く行った。
「何なんだ…あれは…」
隣の工藤が呟く。
護身術しか知らなければ 確かに今の動きは理解出来ないかもしれない。
しかし 俺には分かった。
あの動きは CQB だ。
俺も同じ状況なら間違いなく同じ動きをしたはずだ。
だが どこでアイツはCQBを会得したんだ?
俺と同じ様に身内に会得した奴がいるのか?
ますます謎が深まるばかりだ。
でも
「工藤 俺達も行こう。」
「あぁ…」
今は考えるより動くのが先だ。
俺は工藤を促して一緒にバスに向かった。
そして
「南瀬先輩! 如月先輩! 戻って来て下さい!」
俺はバスの傍で、今だに狂人と奮闘している二人を呼び戻す。
生存者の三人はバスに 無事 乗り、工藤も先に乗った。
あとは先輩二人だけ。
先輩達は俺に呼ばれると すぐに見切りをつけて走って戻ってきた。
二人の闘いのおかげで狂人の数は大分減ったので、戻ってくるのに時間はかからなかった。
そして 先輩が二人とも乗り込み 俺もバスに乗り込もうとする。
が
「ニャ〜」
突然聞こえた鳴き声に自然と動きが止まった。
そして 俺はバスの下を覗き込んだ。
いた。
バスの下にはいつの間にか猫がいた。
それも さっき見た 全身が黒い中右耳だけが白い猫 。
俺は何も考えずに猫を呼んでみた。
と言っても名前なんて知らないから単純に
「 おいで 」
と言っただけ。
すると 猫は俺のほうに近づいてきて 車の下から出て来た。
俺はもう一度 抱いてみた。
今度は嫌がらずにコイツは
「ニャ〜」
と嬉しそうに鳴くだけ。
もしかしたらコイツが知らせたかったのは生き残った三人の事だったのかな?
俺はそう思ったが
「そんな訳ないか。」
自分で小さく笑いながら呟いて、猫を抱きながらバスに乗った。
沖野は俺が乗るとすぐにバスを走らせた。
どうにか 今回 は無事に生き残れたようだ。
俺はため息と共に 新しい仲間を含むみんなの方を向いた。